【技術士二次試験対策】選択科目(II)は専門知識&業務遂行能力を明確にする!

技術士二次試験の選択科目(Ⅱ)では専門知識と業務遂行能力が問われています。専門知識は理解しやすいですが業務遂行能力とはなんでしょうか?

ここでいう業務遂行能力は「今までこんなことしてきました!」ではなく、あくまでも問題に提示される条件・状況の中での業務遂行能力です。その中で留意すべき点や工夫すべき点の説明が必要となります。

ここでもコンピテンシーを理解しないまま問題を解くと、内容がいくら素晴らしくても高得点が望めないので注意しましょう

目次

選択科目(Ⅱー1)

選択科目(Ⅱー1)に求められるのは専門的学識

選択科目(Ⅱー1)で求められるのは専門的学識のみとなります。ここでは業務理解レベルとなっているのでその原理だけではなく、社会でどのように使われているか?今後の展望なども必要です。

新技術開発センターHPより抜粋

まずはキーワード学習

全てのキーワードを網羅した本はない

キーワード学習に関しては何か本や資料などを参照するのが一般的ですが、すべてを網羅したものはありません。となると自分で作る必要があります。非常に地道な作業となりますが選択科目(Ⅱ-1)攻略のためには必須の作業ですし、他の問題対策となります。

そのためキーワード学習は受験を決意した段階で早急に始めるのがお勧めです。私は2月をキーワードのまとめに費やしました。

キーワードのまとめ方

キーワードをまとめる際は以下のようにまとめましょう

キーワードのまとめ方
  • 原理・特徴・課題
  • 実際の適用例
  • 設計時の留意点
  • 関係法令
  • 関連する技術
  • 今後の展望

これらをそれぞれ200字程度でまとめておく。

ここで注意して欲しいのは500文字や600文字でまとめないことです。選択科目(Ⅱ-1)は答案用紙1枚、つまり600字ですのでその中に問題で問われたことを全て書く必要があります。となるとダラダラと書く余裕はなく、必要事項を簡潔に記載する必要があります。

よってキーワードをまとめる時点からこれを十分意識してまとめておきましょう。

地道だけど過去問+白書

まずは地道ですけど過去問を全て確認して、技術用語の一覧を作りましょう。この時は選択科目も全て確認する必要があります。おそらく膨大な量となるでしょう。人によっては100や200を超えることもあると思います。

実際の試験本番ではどのような問題が出るかはわかりません。よって自分の知らない技術用語は(できる限り)すべてをカバーする必要があります。始めるとなかなか大変な作業です。

また同様に白書を参考とするのも良いと思います。私が参考にしたのは「ものづくり白書」「科学技術・イノベーション白書」の2冊です。これらはキーワード学習以外でも現在の社会課題やそれに対する取り組みから、必須科目(Ⅰ)および選択科目(Ⅲ)の対策としても活用できますので、購入しておくのをお勧めします。

特に近年では「サプライチェーン」「DX」「CO2排出係数」など機械部門だけでなく、技術者として検討が必要な事項もキーワードとしてまとめておく必要があります。

ものづくり白書

科学技術・イノベーション白書

お金を出して買うのもあり

お金を出してキーワード集を購入するのも一つの手となります。とはいっても全てのキーワードを完全に網羅する本などはありません。

機械部門でのお勧めは「技術士第二次試験「機械部門」完全対策&キーワード100 」と「技術論文作成のための 機械分野キーワード100【解説集】」です。しかし「技術論文作成のための 機械分野キーワード100【解説集】」はすでに絶版となっているので中古品を手に入れるしかありません。また内容も少し古いので注意が必要です。

技術士第二次試験「機械部門」完全対策&キーワード100 

技術論文作成のための 機械分野キーワード100【解説集】

もちろん全てのキーワードを網羅しているとは言い難いので、過去問+白書をチェックして一覧を作成した後に自分で調べる必要がある場合もあります。

上記の本以外でもお勧めなのは「機械工学便覧」です。例えば機械設計であれば設計工学のところで、自分の知識が不足しているところなどを重点的にキーワード集を作るのも良いと思います。

機械工学便覧

音声で録音しておくのも便利

音声で録音して通勤時や隙間時間に聞いて学習するのもお勧めです。私は自分で録音するのが面倒なのと、自分の声を聞くのが嫌なので「VOICEPEAK」を使用して音声化をしました。

Excelで作成したキーワード集をCSV(たしか、テキスト形式だったかも)で保存をし、「VOICEPEAK」で読み込めばすぐに音声化できます。あとはこれをスマホに取り込めばいいのでとても便利です。

VOICEPEAK

問題を選ぶときの注意!

実際の試験の時に問題を選ぶときの注意点として、もちろん自分が解きやすい問題がベストです。が、そこに罠が潜んでいる可能性もあるので問題文をよく読みましょう。例えば

令和5年度技術士第二次試験問題 機械部門 選択科目 機械設計より抜粋

上記の問題を考えてみると

問題と見出しの数に注意!
  1. Ⅱー1ー1
    3つ選択してその特徴と部品の例と加工の注意点
    →見出しとして12個必要
  2. Ⅱー1ー2
    内力係数、初期締め付け時にねじ部に加わる荷重、ねじ締付け軸方向に引張外力が負荷される時にネジに加わる荷重、それぞれの説明
    →見出しとしては3個必要
  3. Ⅱー1ー3
    変異計から2つ選択し、①測定の原理、②用途、③使用上の注意点の説明
    →見出しとしては8個必要
  4. Ⅱー1ー4
    DRBFMの概要と特徴、考慮すべき事項を3点
    →見出しとしては5個必要

となります。中には選択したものを明記するだけの場合もありますので、単純に紙面を均等に分割すればいいというものでもないですが、見出しが多ければ多いほど書く項目も増えます。さらに文章もそれなりに短くまとめなければなりません。

問題を選ぶ際の注意点
  • (当然として)自分が回答できる問題を選ぶ
  • 見出しが多すぎると文章を短くまとめる必要がある
    →かといって真っ黒な答案は良くない

しかし実際の試験問題は試験当日にしかわかりません。自分が回答できる問題が一つしかなく、その問題の見出しが多かった場合でもその問題を解くしかありません。

そのため、普段論文練習するときから文章をまとめる訓練もしましょう。

ここでも簡単な骨子は作ろう!

骨子というと少し言い過ぎですが、論文構成をまとめてから論文を書きましょう。

具体的には紙面に見出しを書くだけで問題ありません。これを行うだけでも各項目でどの程度文章書けばいいので、最後に用紙が余るor足りないを防ぐことができます。

30分以内で解く!

選択科目(Ⅱー1)は30分以内で論文を完成させましょう。他の選択科目(Ⅱー2、Ⅲー1)の解答時間を考えると30分以内で完成させることが必須です。

これに関しても普段から練習をして30分以内で回答できるようにしましょう。

解答する際の注意点

選択科目(Ⅱー1)は紙面が限られていますので余計なことを書く暇はありません。

選択科目(Ⅱー1)の解答する際の注意点
  • 問われたことのみの答える。背景など問われていないことを書かない
  • 見出し構成を工夫して均等に設問に答える。読みやすさも重要
  • コミュニケーションを意識!わかりやすい文章を。必要であれば図も書く
  • 専門的視点が必要。他の人と同じような回答にならないように図表や数値データを入れる。

とにかく忙しい試験です。5分で設問の決定、論文構成の決定を終わらせ、残り25分で論文を書き終えましょう。

選択科目(Ⅱー2)

選択科目(Ⅱー2)に求められるのは業務遂行手順

選択科目(Ⅱー2)に求められるのはマネジメントとリーダーシップとなります。つまり実際の業務の際にどうやってリーダーシップとマネジメント能力を発揮するかということが問われます。

これは実際に業務をしていないとなかなか難しい質問です。しかし言い換えれば普段自分がどのように業務を行っているかをよく振り返り、どこでコンピテンシーを発揮しているかを考えればそれほど難しい問題ではありません。

新技術開発センターHPより抜粋

コンピテンシーをよく理解しよう!

設問(1)、(2)はマネジメント

選択科目(Ⅱー2)の中でも設問(1)および(2)はマネジメントが求められる問題となります。マネジメントとは何でしょうか?

日本技術士会 技術士に求められるし資質能力(コンピテンシー)より抜粋

簡単にいうと「資源(リソース)の配分」です。注意しなければいけないのは「分けた与える」ということなので、以下のようなものは技術士が行うマネジメントとしては認められません。

マネジメントとは認められないこと
  • 予算がないので上司に掛け合った
  • 納期がないので業者にお願いして納期を伸ばしてもらった
  • 人がいないので別部署から応援をお願いした。

これらは技術士でなくてもできる業務です。技術士であれば何らかの技術的対策や方法により予算の配分などを行うことが必要です。ここも誤解しやすいところですので十分注視しましょう。

設問(3)はリーダーシップ

設問(3)はリーダーシップが求められる問題となります。リーダーシップとは何でしょうか?

日本技術士会 技術士に求められるし資質能力(コンピテンシー)より抜粋

ここを一言で表すのであれば「利害関係の調整」です。技術士の業務というのは多様な利害関係者と仕事をすることが多いです。そうなると例えばQCDの観点から相反関係(トレードオフ)が生じます。

このトレードオフをどう解決するのかということですが、これも注意する必要があります。

リーダーシップとは認められないこと
  • 納期が間に合いそうにないので利害関係者同士の話し合いの場を設け、話し合いの上で納得してもらった。
  • 追加工事により追加費用請求が来たが、プロジェクト予算がないので担当者と話し合い減額してもらった(下請法的に問題あり!)

上記2点ともリーダーシップを「プロジェクトなどの先頭に立って業務をこなすこと」と誤解してしまうとこうなりかねません。重要なのは「技術的解決策を持って複数の利害関係者に納得してもらう」ことです。

話し合いの先頭に立つことも重要ですが、技術士でなくてもできる業務ですよね?誤解しやすいとことですのでしっかりと覚えましょう。

用紙配分

用紙配分としては

  • 1枚目の19行で設問(1)
  • 1枚目の5行で設問(2)の調査結果と判断の理由
  • 2枚目の14行で設問(2)の留意すべき点と工夫すべき点
  • 2枚目最後の10行で設問(3)

と決定しましたが令和6年度の試験では少し問題に変更がありました。よってこの問題でも骨子をしっかりと作成して、用紙配分を決定してから記入することが必要となります。

ちなみに私は本番の試験では最後の3行は空いてしまいましたが、それでも「A」評価をいただくことができました。

設問(1)調査、検討すべき事項とは?

設問(1)は調査、検討すべき事項を考える必要があります。これらは一体なんでしょうか?

調査事項

調査事項というのはトラブル解決、問題解決を達成するための材料を集めるために行うことです。よって何か問題やトラブルがないと調査は行えないことになります。

ということでまずは調査から行うのですが、選択科目(Ⅱ-2)の場合は「◯◯を具体的に一つ挙げ」と記入されていることが多いので、それを具体的にあげないと何を調査するのかわかりません。ここは問題文に忠実に論文を書いていく必要があります。

また、調査項目を挙げる際は「◯◯な状況で⬜︎⬜︎したいけど△△な制約があるので××な問題解決のために調査をする」などのように書かないと、問題が何かわからないので何に対して調査しているかもわからなくなります。

検討事項

原則として調査項目があるから検討します。調査した内容の中で「これが怪しい」というものを検討します。よって調査項目と検討はリンクさせた方がわかりやすくなります。

  • 「◯◯調査の結果、影響が大きければ⬜︎⬜︎を検討する」

のような書き方ですね。ここを調査事項と検討事項に見出しを分ける人もいると思いますが、私は一つの見出しで「調査して、検討する」というように書きました。その方がわかりやすいと思ったからです。

ただし、実際には調査事項の中から怪しいものを検討していくので調査事項の方が多くなると思います。しかしそこまで書くと紙面がいくらあっても足りないので、私は調査→検討という流れで統一しました。

設問(2)留意すべき点、工夫すべき点とは?

留意すべき点と工夫すべき点も設問(1)とリンクする必要があります。選択科目(Ⅱ-2)は何らかの問題やトラブル解決のための業務遂行手順となります。ですので全体がリンクしていないとおかしいわけですね。よって「実際に自分が業務を行うならこうする」という視点が必要です。

その中で調査・検討した結果何をすべきかわかるわけです。令和6年度は「最も重要な要因について〜」と少し問題が変更となりましたが、基本的な考えは一緒です。あくまでも調査・検討した結果から「これが要因」と考えて対策をします。

その上で、留意すべき点・工夫すべき点があるので必ず設問(1)からの流れとなるような論文としましょう。

留意点

この遂行する上で潜在しているリスクというのが必ずあるはずです。リスクとまではいかなくても不具合が発生しそうな事象でもいいです。よくいわれるQCDのバランスから考えるとわかりやすいと思います。

留意点とは?

業務を遂行するにあたり

  • もしかしたら品質に影響が出るかもしれない
    →事前に生産技術と打ち合わせをして品質影響明確化
  • コストがものすごくかかるかも
    →PJの予算表を作成の上で各機器のコスト管理を実施
  • 納期が守れないのでは
    →納期確認を実施してPERT図で管理をしておく
  • 安全に問題が発生するのではないか
    →FMEA、リスクアセスメントを実施
  • 環境負荷が大きいのでは
    →環境影響を確認しておく

などのQCDSEの観点から考えるとわかりやすい

これらを受容(保有)するが故にとる対応です。これら留意点をなくすためにはこの活動をやめるしかないですから、リスクを低減して受容(保有)するために何をするか?点から考えましょう。

工夫点

工夫点はリスクや不具合を解消するための対応です。つまり留意点よりも具体的な行動となります。留意点が

  • 「あれ心配だから事前にこれを考えておこう」

であると工夫点は

  • 「あれ心配だからこれをやることでそもそも心配事をなくしてしまおう」

という感じです。これもQCDSEの観点から考えるとわかりやすいと思います。

工夫点とは
  • もしかしたら品質に影響が出るかもしれない
    →品質に影響がでない設計、機器の導入をする
  • コストがものすごくかかるかも
    →VEにより同品質で低コスト品を導入する
  • 納期が守れないのでは
    →PERT図からクリティカルパスのところにリソースを集中させる
  • 安全に問題が発生するのではないか
    →リスクアセスメントの結果からリスクを受容できるところまで対応をする
  • 環境負荷が大きいのでは
    →環境負荷の小さな設備導入

あくまで工夫点はリスクや不具合を解消させるための具体的な行動と心がけましょう。

設問(3)関係者との調整方法

実はこの設問(3)は設問(2)に時間を取られすぎる、もしくは紙面を使いすぎて解答できないことがあります。しかしここはリーダーシップをアピールするところなので、最低10行は欲しいです。

上記に記載の通りしっかりと「リーダーシップは何か?」を理解しましょう。間違っても「プロジェクトの先頭に立って指揮をする」とか書かないように。

ここでリーダーシップを発揮する!

設問(3)で重要なのは「誰とどんな情報を共有するのか?」という点につきます。つまり「ステークホルダーに対してあなたはどのように調整しますか?」というところを問われているわけです。

ここでいうステークホルダーは社内でもあり社外でもあります。

ステークホルダーとは?
  • 社内関係者
  • クライアント
  • 一般住民
  • 関係機関(保健所、市役所、自治会など)

テキストなどによってはここでいうステークホルダーは社外関係者、さらに行政機関の方が良いという場合もありますが、どうしてもそういうところと関係ない仕事をする場合もあります。

それは仕方ないのでその代わりステークホルダーは「◯◯」とはっきり明記しましょう。もちろん社内関係者でも「品質管理部署」「生産技術部」とか全く別の部署・部門にしてください。

余談

筆記試験はこれで良くても口頭試験では

  • 「社外のステークホルダーと調整したことは本当にないのですか?」

と聞かれることがあります。これはリーダーシップいう点で「社外のステークホルダーと利害関係の調整をしていないの?」と疑問を持たれていることです。

業務をすれば少なくても顧客や法的な届出など社外関係者と関わることもあると思います。口頭試験を見据えて自分の業務をよく整理しておきましょう。

実際の回答についてですがその時に「何を目的に、誰とどのような調整が必要か?」を意識して、リソース配分も考慮して具体的に解答して下さい。技術士コンピテンシーで言う調整能力とは、要するにリーダーシップを意識したマネジメント力とコミュニケーション能力です。

絶対に書いてはダメなこと
  • 話し合いで納得してもらう
  • なんとか減額してもらう
  • 人を採用してもらう

技術者なので技術的な説明を定量的・わかりやすく説明することを意識しましょう。

目指すべきは業務手順書・業務報告書

選択科目(Ⅱ-2)の目指すところは業務手順書や業務報告書です。あなたに業務を任せても抜けがなく確実に業務を遂行することができ、ステークホルダーへの調整も任せることができるということをアピールしましょう。

こうなると色々な業務を経験しているという点でちょっと不公平感が出てしまいますが・・・勉強すれば論文書くことはできますので、再現論文などを読み込み勉強してください。

まとめ

選択科目(Ⅱ)は、技術士としての「専門的学識」と「業務遂行能力」の双方が問われる重要な試験です。(Ⅱー1)では技術的知識を正確かつ簡潔に説明する力が、(Ⅱー2)ではマネジメント力・リーダーシップ・コンピテンシーの実践力が求められます。どちらも「技術士でなければできない行動」を具体的に論述することが高得点の鍵です。

試験対策としては、キーワードの整理、過去問分析、業務経験の棚卸しに加え、論文を素早く論述できる力を身につける練習が不可欠です。さらに、設問ごとに必要とされる構成や観点を押さえ、論理の一貫性を持たせた骨子作りを徹底することで、評価される論文に仕上がります。

日頃の業務を見直し、技術士としての資質能力を意識した行動を取ることが、論文力の向上に直結します。本記事の内容をもとに、確実な合格に向けた準備を進めていきましょう。

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