非常に古い本ですが、攻殻機動隊(特に初期の映画と漫画)が好きな方はご存じある方も多いと思います。その攻殻機動隊に大きな影響を与えたのが本書「機械の中の幽霊 The Ghost in the Machine」と言われています。
アーサー・ケストラー著によるこの作品は、私の持っているペリカン双書版は初版が1969年と51年前の本であり、他にもちくま学芸文庫からも発刊されていますが、既に両方とも絶版です。購入するには古本屋で運よく見つけるか、ヤフオクやメルカリなどで出品されている物を購入するしかありません。
そして絶版でもあり、一部ではカルト的な人気を誇る事から、定価をはるかに超える金額で売りに出されています。
私は古本屋(ブックオフとかではない)をブラブラ回っていたら、運よく見つける事が出来て何も考えずに購入しました。
機械の中の幽霊-The Ghost in the Machineの内容
内容としては
- 言語、生体、社会的組織などすべての物は階層性を持っており、「部分」と「全体」から成り立っている。しかし、「確実な全体」としては存在せずに我々がみているのは上位に行くほど複雑性を増していく「亜全体」というものである。そしてその「亜全体」は見方によれば「部分」であり「全体」でもある。
- そしてこの「見方によっては部分として振る舞い、見方によっては全体として振る舞う」ものを著者(アーサー・ケストラー)は「ホロン」と名付けた。
- そしてその「ホロン」を生物の進化、本能的活動、物の認識の仕方、運動性等に拡張していく。
- 進化は本当に「ランダムな突然変異」なのか?上位のホロンによる「階層性」に制御されているのではないか?
- 機械の中の幽霊とは何か?
- 心と脳の関係は何か?
- 人間はなぜわけもなく殺したり死んだりするのか?
- なぜ人間は戦争をするのか?
- 人間は狂っているのか?
- 人間が狂っているのであれば人間は進化における過ちの生物ではないのか?
- 人間の脳の欠陥は何か?
そして最後の方では
- 人間の脳は古い脳と新しい脳が存在しており、すでに進化としては来るところまで来てしまっており、これまでの負の歴史を繰り返さないように自発的な進化をすることはすでに期待できない。自然は正しい治療法を与えてくれない。つまり人為的な変化で進化を引き起こすしかないのである。
- この問題を解決するには薬物で「新しい脳」と「古い脳」を制御するしかない
という風に全人類を適切に進化させるには薬物投与しかないという結論に至っています。
この本が書かれていた時代は、1969年は第二次世界大戦も終了していますが、米ソの激しい宇宙開発や中ソ国境紛争など必ずしも平和な時代ではありませんでした。
それ以外でも
- プラハの春
- 東大安田講堂攻防戦
- アメリカ海軍EC-121機撃墜事件
- アポロ11号
- 北アイルランド問題
と必ずしも明るいニュースばかりではありませんでした。
第二次世界大戦が終わったにもかかわらず、同じような歴史を繰り返す人類を目にしては「人間の頭はおかしい」と考えるのも不思議ではないことかもしれません。
ケストラーが書いた時代から人間は進化したのか?
すでにこの本が書かれてから51年たっていますが、はたして人間は進化しているのでしょうか?
この記事を書いているのは2020年4月ですが、現在世界ではコロナウイルスが蔓延していて、世界的なパンデミックを引き起こしています。
そんな中で人類は協力しているかと言われれば
- 中国による情報隠ぺいによるコロナウイルスの世界中への拡散。
- WHOの中国寄りな態度によるコロナウイルスの世界への拡散。
- 世界的なマスク不足による買い占め、一部の人間の転売。
- 食料品の買い占め。
- 自分は大丈夫という考えから感染を広める人間。
- 「協力して外出自粛しよう」といっても外出して交通渋滞を起こす人たち。
- 熱があるのに飛行機に乗っちゃう人。
などなど、とてもじゃないですが進化しているとは言えない状況です。
まさに、アーサー・ケストラーが危惧しているような状況になってしまっているわけです。
また、製造業ではAIが大ブームです。知能というものの定義が正確にできないにもかかわらず。
ただ単にビッグデータを分析させて将来を予測させる程度のAIでも、これまでの人間の歴史を勉強すれば「人間はおかしい」と思うことはないでしょうか?まさに映画のような現実が目の前に迫ってきているかもしれません。
内容としては非常に難しく長い本ですが、攻殻機動隊を知らずとも一読の価値はある本だと思いました。
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