配管圧力損失の計算はポンプの選定や途中で挿入するフィルター等による影響などを知るために非常に重要です。もし、ポンプの選定を誤ればポンプによる送液に支障が発生して、流量の極端な低下や最悪の場合には送液不能。
これが客先に必要な圧力を供給する設備の場合、大きな問題となります。
しかし、この圧力損失は大体の本では色々計算が必要で非常に難しいものと捉えがちですが、少なくとも水の場合は簡単に計算できるので解説していきます。
なお、他の人が書く記事だと層流や乱流の違いなど専門的な内容も記載していますが、当記事では実務に必要な内容のみを記載しています。
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水の場合は実揚程に損失水頭を足せばOK!
配管圧力損失って何?というのは割愛します。この記事を読んでいる人はおそらくほとんどの人は概要は知っていると思いますので。
知らない人は「流体力学 (新物理学シリーズ)」や「マンガでわかる流体力学」で勉強してください。
圧力損失は本来であれば粘度や密度に左右されるので、それらを考慮した計算が必要ですが水であれば損失水頭表を利用すれば簡単に計算(というかほぼ計算いらず)で導くことができます。
ということで下記のような配管で計算してみましょう。この場合だとポンプ自体は単純に高さ(50,000mm)の高さを上げればよいのですが、実際には配管には損失が発生するので
というか50mってなかなかの高さだな・・・。
- 50,000mm+損失分(損失水頭)
の揚程を満たす能力が必要となります。
画像の方にも書いていますが
- 流体は水
- 流量:12m3/h
- 配管口径:50A(水なので流速を1m/sに抑えることとして)
- バルブは全てグローブ弁(玉型弁)が2個
- 逆止弁も1個
- 途中で曲があるので全長は80m
- エルボは12個
という条件で計算してみます。まず損失水頭を計算しましょう。
損失水頭表から計算するには”相当管長”が必要
損失水頭表というのは
- 「この流量でこの配管口径だと1mあたり○○mm(単位が違うので注意)の損失がありますよ」
と教えてくれる表です。なので配管の長さがわかればいいのですが、配管の途中では必ずエルボやバルブがあります。これらの損失をどう考えるか?が問題となります。
このとき便利なのが「相当管長表」です。これを利用すると
- 「この口径のエルボは○○mの直管長さとになります」
とわかるのでこれを利用すれば簡単に配管の全長を求めることができます。
ということで実際計算してみましょう
- 全長は80m
- 50Aの玉型弁が2個:相当管長は17.6×2=35.2m
- 50Aの逆止弁が1個:相当管長は4.4×1=4.4m
- 50Aのエルボが12個:相当管は0.6×12=7.2m(エルボは溶接式のロング)
- よって圧力損失が発生する全管長は80+35.2+4.4+7.2=126.8m
と換算すると直管長では、単純な全長に比べて46.8mも長くなっています。
これを見るといかにバルブや曲がりを減らすことが圧力損失を減らす上で重要かよくわかりますね。
次に損失水頭表から損失水頭を計算する。
そしてこれを損失水頭表でどの程度の損失が発生するのか算出しましょう。
- 流量は12m3/hなので200L/min
- 200L/minと50Aの交点から損失水頭を算出すると55mm/m。
- つまり1mあたり55mmの損失水頭が発生する。
- つまり先ほど求めた全長+相当管帳を考慮すると、55mm/126.8m=55×126.8=6974mm≒7.0m
- つまり損失水頭は7.0mとなる。
つまり今回の配管で送水すると7.0m分の損失が発生するとわかります。
最後に実揚程も加えて計算完了
ここまで求めたものが「吐出し損失水頭」です。あくまでも「損失分」なのでこれに実際に必要な水頭を加える必要があります。
つまりポンプが実際に送水する高さなので実揚程を加える必要があります。
- 今回の実揚程は50000mm=50m
- 損失水頭は7.0m
- よって全揚程は50+7.0=57.0m。
- これに私は1.3倍して57.0×1.3=74.1mとする。
- 使用中に配管の中にサビが発生するなどの経年劣化による摩擦損失の上昇が考えられるので。
- 詳細設計をしたらエルボが追加になったりする場合があるので。
- ギリギリでポンプを選定すると上記のようなことがあった場合に送水不能になるので。
最後に実際のポンプを選定してみましょう。
実際のポンプの選定は選定図面から!
実際の選定を荏原製作所製の「MDPE型ステンレス製多段渦巻ポンプ」を例にしてみましょう。
まず選定図を見る必要があります。選定図はポンプメーカーであれば必ず準備をしているので、カタログなどに必ず乗っています。
- 流量は12m3/h=200L/min
- 全揚程は74.1m
- これらが交差するところは「MDPE367.5」となる。
これでポンプの選定もできました。
ということで単に水のポンプであればほとんどが単純な足し算と掛け算、さらに表から数値を見るだけで計算できるので非常に簡単ですね。
水以外での圧力損失の求め方
では水以外で求める場合にはどうしたら良いでしょうか?実際にはいろいろな方法があり本によっても書いてあることが違うのですが、私は基本的に
- ハーゲン・ポアゾイユの式
- ファニングの式
をメインとして使っています。
層流の場合はハーゲン・ポアゾイユの式一択!
層流の場合はハーゲン・ポアゾイユの式一度となります。表すと下記のようになります。
ですが超高粘度流体ならまだしも、ガスや普通の液体であれば基本的に乱流となるのであまりこの式の出番はないですね。
層流にするようになると非常に流速が低くなるので、食品プラントなどではCIPの効率が下がるので使えません。
しかし、層流で設計する場合がないとも言えないので必ず覚えておきましょう。
乱流の場合はファニングの式
乱流の場合はファニングの式を使います。
ハーゲン・ポアゾイユの式のところでも話したとおり、あまり層流で設計する配管は少ないと思うのでどちらかというとこの式を多く使います。
そしてこの式で問題となるのがf(管摩擦損失係数)です。つまり乱流の場合は速度、配管長及び配管径だけでなく管摩擦損失係数も考える必要があるということです。
では次は管摩擦損失係数に関して解説していきます。
管摩擦損失係数の考え方
管摩擦損失係数というのはRe(レイノルズ数)に依存します。Reが大きくなると管摩擦損失係数はReに依存しなくなります。
しかしこの表を毎回読み取るのは面倒なので、私はブラジウスの式かカルマンーニクラゼの式を使用しています。
これらを使用して管摩擦損失係数を求めれば簡単に求めることができます。
実は資料によってブラジウスの式や他の式でも値が違う場合があります。例えばブラジウスの式の「0.0791」が「0.3164」の場合があります。
これは一部資料によっては4f=λとして表示しているので4倍しているのです。
4f=λとおいた式は「ダルシー・ワイスバッハ」の式と呼ばれます。詳しことは各自流体力学の本を読んでね♪
相当管長の考え方
相当管長については上の方に記載のある水の摩擦損失の考え方でも表を載せました。
しかし、乱流の場合の摩擦損失係数ではどうしても関数電卓やExcelで計算が必要です。その時にいちいち表から読み取るのは非常に面倒です。
そんな場合は下記のように相当管長(le)と配管直径(D)の関係があるので自動で計算するようにすると非常に便利になります。
オリフィス流量計などの機器の損失は?
オリフィス流量計などの機器も圧力損失の原因となります。しかし、このような機器をいちいち自分で計算するのは面倒なので、メーカーにどの程度の圧力損失が発生するのか問い合わせてみましょう。
配管が急縮小する場合
下図のように配管が急縮小する場合は実験的な値を利用することで、圧力損失を計算することができます。
問題となるのは損失係数ζですが、これは実験結果から以下のように定義されているのでその値を使用しましょう。
タンクの取り出しなど以外は必要ないとは思いますが、知識としてこのような計算もあるとは覚えておきましょう。
なお、管継手としてレデューサーがありますがあの場合は急激な縮小ではないので、レデューサーのあるところから配管口径が変わったということで計算し直すことで問題ありません。
圧力損失の計算は配管設計で超重要!
以上、長々と書きましたが配管の圧力損失の計算方法を解説しました。
ネット上の他の記事だと層流と乱流の違いやレイノルズ数について詳細に記載した記事もありますが、当記事では実務を考慮してそのへんは割愛したのでもっと流体力学について勉強したい方は何回か紹介した「流体力学 (新物理学シリーズ)」がおすすめです。
「流体力学 (新物理学シリーズ)」はちょっと高いし、いきなり専門的な本は・・・という人には「マンガでわかる流体力学」がおすすめです。ただ、かなり初歩的な内容なので個人的には「流体力学 (新物理学シリーズ)」がおすすめです。
専門的な本を一冊持っていると手元で色々と調べることができて便利なので、ぜひ購入しましょう!
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