現役プラントエンジニアが教えるプラント設計の基礎知識。
学校では教えてくれないことを中心に、実務に直結する内容を書いていきます。
今回は「ガスケット」について語ります。
なお、記事内の写真は「株式会社バルカー」、「旭有機材株式会社」及び「大阪サニタリー株式会社」のHPより引用しております。
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正確な選定はメーカーに!
こんなこと言うとこの記事の意味がなくなってしまいますが、正確な選定はメーカーに問い合わせましょう。適切なガスケットの選定は、流体の種類、設計温度、設計圧力、フランジ材料などの要素に基づいて行う必要があります。
疑問点が少しでもあれば下記の点を合わせてメーカーに問い合わせましょう。
流体の種類と濃度の確認
ガスケットは様々な化学的性質を持つ流体に対応するため、いろいろな材料で製造されています。特に薬品を扱う場合その濃度も重要な要素です。適切なガスケットを選定するためには、流体の種類と、薬品の場合はその濃度についてメーカーに正確に伝える必要があります。
設計温度と設計圧力
ガスケットの性能は設計温度と設計圧力に大きく依存します。高温や高圧の環境下では一般的なガスケット材料では耐えられない場合があります。
フランジ材料の適合性
フランジの材料もガスケット選定に重要な要素です。ガスケット材質とフランジ材料との化学的・物理的相性を考慮することで、長期にわたる信頼性と性能を保証します。
複数の流体の使用
システムで複数の流体を使用する場合は、それら全てに適合するガスケットを選定する必要があります。複数の流体を使用する場合は必ず連絡しましょう。
これらを必ず考慮する必要があります。例えば安易に
「薬品はほとんど使わないからなぁ・・・」
とかで選定すると数年たった後にすごいことが起きるので注意しましょう!
FFフランジには絶対FFガスケットじゃないとだめなの?
そんなことはないというか、FFガスケットは正直漏れやすいので好きじゃないです(笑)。
FFガスケットはその平らな接触面により均一な圧力分布を提供しますが、RFガスケットよりも漏れやすいのも事実です。これはガスケットの材質やフランジの状態、ボルト締め付けの均一性に左右されます。
RFだとある程度締めるのが適当でも漏れませんからね。
とはいっても第二種圧力容器などはFFガスケットじゃないと怒られるので注意しましょう。
ジョイントシートガスケット
バルカーでいう6500です。非常に一般的なガスケットで空気や水にはほぼこれだけでいいでしょう。
- 一般的なガスケットで空気、水及び不活性ガスにはこれでOK。
- 一部オイルや薬品にも使用できますが、そのようなラインはPTFE系のガスケットを使用したほうが安全
- 繊維からできているのでたまにですが計装エアーなどで使用すると、その繊維の隙間から漏れてくることがある。
- ゴムライニングのフランジなどで使用すると張り付いてしまい取るのがめんどくさい。
- 6500ACだと張り付きにくく腐食抑制効果がある。
私は空気、冷水、温水、不活性ガスであれば迷うことなくこれを使用しています。
PTFEガスケット
バルカーでいう所の7010や7020ですね。バルフロンシートと呼ばれています。
- ほとんどの流体で使用できる。使用できないのはフッ化水素酸、王水、モノマーくらい?
- 純粋なPTFEはコールドフローを起こしやすい。そのため再使用が不可。締め付けすぎたりすると割れることもある。なので私はいつもバルカーでは7020を使用していた。
- ジョイントシートに比べると価格が若干高い。
上にも書いてある通りコールドフローを起こすので、私は基本的にバルカーでいう7020ばっかり使っていましたね。
ジョイントシートガスケットを使用できなくて、かつ上記でない場合は基本的にバルカーの7020ばかり使っていました。
うず巻形ガスケット(ボルテックスガスケット)
バルカーでいう所の8590番ですね。
- 高温・高圧ラインでも問題なく使用できる。そのため、私は蒸気ラインは全てこれを使用している。
- PTFEまでではないにしてもある程度薬品にも体制がある。
書いてある通り蒸気のラインはこれ一択!使い分けるのがめんどくさいのでドレンラインとかもこれ使ってました。
膨張黒鉛ガスケット
バルカーでいう所のVF-30などです。バルカホイルとも呼ばれています。
- 極低温から高温まで使用可能。
- フッ化水素酸、フッ化ケイ素酸にも使用できる。
- 不活性ガス以外には使用できない。
正直・・・そんなに使ったことありません。
主にガスケット使用するのはこれくらいですね。
私はほとんどバルカーでいうと6500、7010か7020及び8590ばっかり使用しています。
硬質塩ビ製フランジには専用ガスケットを!
硬質塩ビ製フランジを使用している場合は、必ず専用ガスケットを使用しましょう。
例えば旭有機材(株)の出しているAVパッキンなどですね。
しかし、EPDMはPTFEに比べると耐薬品性の観点からは低いので、必ずよく確認して必要であればPTFE被覆を購入しましょう。
PTFEは非常に優れた化学的安定性を持ち、強酸や強アルカリにも耐えることができます。が、ゴムではないので弾性がありません。なので締めすぎると割れると言う欠点もあります。
サニタリー配管にも専用ガスケットを!
サニタリー配管はその清潔さと洗浄性が要求される業界、特に食品、飲料、製薬業界で広く使用されています。これらの配管は一般的にフランジ接続ではなく、ヘルール接続(あるいはトリクランプ接続)を用いて組み立てられます。そのため、こうしたシステムでは特定の種類のガスケットが必要となります。
こちらは材質はたくさんありますがほとんどがゴム(NBR、EPDM、FKM)です。
サニタリー配管はCIPで薬品を使いますので、必ず対応表を確認してから使用しましょう。
漏れちゃうときはダイフロイルグリスが使える!
先ほども申し上げたように、基本的にFFフランジにもRF型のガスケットの方が漏れにくいです。
しかし、第二種圧力容器などではFFフランジにはFFフランジ用のガスケットでないと、許可が下りません。
そんな時に使えるのがダイフロイルグリスです。
ダイフロイルグリスとは簡単に言うとフッ素樹脂のグリスなのですが
- 耐熱性、耐薬品性、潤滑性に優れている。
- 濃酸、濃アルカリ等腐蝕性の液体に侵されない。
- 濃硫酸や沸点のアルカリ水溶液と反応しない。
- 耐水性に優れている。
- 潤滑性に優れている。
- 金属を腐食しない。
- 酸素に触れても燃えない。
と、非常に優れた特性を持っているのでガスケットに直接塗布しても全く問題ありません。
私もよく使用していました。ジョイントシートガスケットに薄く塗ってから取り付けると、繊維の隙間からの漏れなども無くなるのでとても便利でしたね。
しかし、一応グリスなので禁油ラインに使用する際は注意が必要です。
また、値段がかなり高く50gで8000円もするので使いどころは非常に悩みます。
ガスケットにまつわるトラブル
さて、ここでガスケットに関する私が経験したトラブルを紹介します。
- ジョイントシートガスケットを使用して気密試験(0.9MPaG)をしたところ、漏れが止まらなかった。
・原因:ジョイントシートガスケットの繊維の隙間から漏れていた。
・対応:ガスケットを交換。全面にダイフロイルグリスを薄く塗布した。
- PTFE被覆のAVパッキンを硝酸ラインに使用したところ、使用して数か月持たずに漏れてきた。
・原因:締め付けトルクが強すぎてPTFE被覆が割れ、EPDMが徐々に硝酸に浸食された。
・対応:配管を念のためSUS316Lとしてガスケットもバルカーの7020に変更した。
- ゴムライニング配管にジョイントシートガスケットを使用したところ、バルブ交換の際にガスケットが張り付いてはがすのが大変だった。
・原因:ゴムライニング配管にはジョイントシートガスケットではなく、AVパッキンなどを使用すべきだった。
・対応:全箇所、AVパッキンに変更した。
などなど、それほどトラブルは多くないですがさすがに硝酸が漏れたときは焦りましたね(笑)。
まとめ
- 正確なガスケットの選定はメーカーによく聞くこと。
- ジョイントシートガスケットは水、温水、エアーに使用できる。
- PTFEガスケットはフッ化水素酸、王水及びモノマー以外に使用可能。ただし、コールドフローに注意。
- 蒸気ラインはうず巻形ガスケット!
- フッ化水素酸、フッ化ケイ素酸には膨張黒鉛ガスケット!
- 硬質塩ビフランジには専用ガスケット。
- サニタリー配管はCIPを考慮して材質を選定する事。
- ダイフロイルグリスを塗布すると漏れにくくなり便利。
- 間違った使い方や、材質の選定はトラブルの元!
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