【プラント設計の基礎】バルブの選定のポイント!基本事項とトラブル事例を解説!【配管設計】

【プラント設計の基礎】バルブの選定のポイント!基本事項とトラブル事例を解説!【配管設計】

みなさんこんにちは、プラントエンジニアのヤンです。

プラント中で欠かせないものといえば配管とバルブではないでしょうか?

バルブは液体だけでなく気体や場合によっては粉体も含めて、様々な物質の流れを制御しています。

身近なところでは水道の蛇口やガスの元栓などがありますが、今回はプラントで使われるバルブについて解説していきたいと思います。

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目次

動画でも解説しています

バルブの役割とは?

バルブの役割とは?

バルブの役割として最も基本的なことは、流体を流れを制御することです。

もっとも単純ですがこれがバルブとしての機能です。

そして流れを制御するということは、流す場合と止める場合がありますが、一般的に止める機能の方が重要視されます。

基本的にバルブは流れない事よりも止まらない事の方が大きな問題となるので、流体を完全に止めることが重要と覚えておきましょう。

止めるのに重要なのがシート(パッキン)

バルブの流体を止める機能で非常に重要なのがシート(パッキン)です。

これはバルブの形状にもよりますが、バルブのボディとディスクやボールが接しているところには必ずついています。

そのため使用する流体によってはボディやディスクは問題なかったけど、シートが流体によってやられて劣化しまうことがたまにあります。

そのため、使用する流体に応じてパッキンの仕様が不可欠となります。一般的にはPTFEを素材としているので大体の流体や液体に適合していますが、高温のバルブはメタルシートなど特殊なものが用いられます。

そうなった場合は多少のリークは避けることができません。基本的にはANSI B16.104もしくはJISであればJIS B2005-4:2008に規定されている、リーク量に基づいて設計することになります。

ただ・・・私の経験上ほとんどはANSI B16.104に基づいた設計がされていました。そしてグレードも多くあるのですが基本的にはVもしくはVIを選んでおけば大きな問題は発生しませんでしたね。

圧力-温度レート

バルブは配管の構成部品として使用されるので、もちろんそこには圧力と温度が作用します。温度が高くなれば一般的には材料の強度が低下するので、同じ材料や肉厚でも温度が変われば最高使用圧力は変化します。

これらをいちいち計算するのは非常に面倒なので、JIS B2220やASME B16.5及びJPI-7S-15-1999 では温度と圧力のレーティングが細かく記載されています。

しかし、JISよりもASMEのほうが非常に細かく記載していますので、高温高圧の流体を取り扱う場合はASMEの基準に従うのが一般的です(というかあまりにも高温・・・600℃とか超えるとJISでは規定されていない)。

となるとJISのASMEではクラスの表現が一部違うので換算する必要がありますが、基本的には以下のように考えれば問題ありません。

圧力-温度レート

基本的には上記の表に基づいて設計を行えば問題ないですが、最初の方で述べたように温度が高くなれば最高使用圧力は低下しますASME B16.5に詳細が書いてありますので、各自で調べてみてください。

バルブの種類

バルブ種類形は様々な形があります。簡単に分けるだけで

バルブの種類
  • ボールバルブ
  • グローブ(ニードル)バルブ
  • ゲートバルブ
  • ベローズバルブ
  • バタフライバルブ
  • ダイヤフラムバルブ

と多種多様なバルブがあります。

この中でも

  • 全開、全閉で使う。
  • 流量調整で使う。
  • 内部リークが問題となる個所に使う。
  • 外部リークは絶対に防ぎたい。
  • 密閉性能が重要

という風に基本的な用途や使用場所が決められています。一般的なバルブとその特徴をまとめると下のようになります。

一般的なバルブとその特徴

このように各バルブには使用に適した場所と用途が存在します。例えば流量調節が必要なところではボール弁よりもグローブ弁を使用すべきですが、異物が多い箇所ではボール弁でないと閉塞する可能性があります。

よくあるのが何でもかんでもボール弁を使用する工場やプラントがあります。確かに調節などもできないことではないですが、用途としては間違っており正確な流量測定はできないので注意が必要です。

ボール弁

ボール弁

plantautomation-technology.com

ボール弁はその名の通り内部にボールが入っており、それを90°回転させることで全開、全閉をコントロールするバルブで圧力損失が最も小さいです。

基本的には流量調整には使用せず全開か全閉の状態で使用します。フルボア型を購入すれば配管の内径とボールの内径が同じなので、異物が多少混入している流体でも問題なく使用できます。

操作もレバーを回転するだけなので簡単ですが、100A以上になるとハンドルが重くなるのでバタフライ弁に置き換える検討が必要となります。

ボール弁の使用箇所
  • 通常のガスや水などで流量調整が不要なところ
  • 圧力損失を抑えたいところ
  • ヘッダー管の捨てバルブ
  • 排水ラインなど異物が混入するところ(スラリー)
ボール弁の利点
  • 圧力損失が非常に小さい。
  • 操作が簡単。
  • 3方弁や4方弁などがある。
ボール弁の欠点
  • 流量調整はできない。
  • 100A以上になるとハンドルが重くなる。
  • 構造によっては以上昇圧の危険がある。

グローブ(ニードル)弁

グローブ(ニードル)弁
ayvaz.com

グローブ弁もしくはニードル弁は内部のシール性が非常に良く、同時に流量調整もできるバルブです。ニードル弁は微量流量の調整の際に採用されます。

また、圧力計などの機器の元弁にも良く使用される弁です。

しかし、流量調整ができるということは圧力損失が大きいので、使用用途は制限されるバルブとなります。

また、構造上弁棒のグランド部からリークすることが多いので危険な流体には使用できません。同様に未使用時はグランド部に圧力がかからないように、流れ方向に注意する必要があります。

グローブ弁の使用箇所
  • 圧力計などの元弁
  • 流量調整が必要な箇所
  • 締切能力が求められる箇所
グローブ(ニードル)弁の利点
  • 流量調整に使用できる。
  • 締切性能が良い。
  • ニードル弁にすれば微量流量も調整できる。
グローブ(ニードル)弁の欠点
  • 圧力損失が大きい。
  • 流れ方向が決まっている。
  • 外部リークがある。

ゲート弁

ゲート弁

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ゲート弁は圧力損失が小さく、シートの密封性も良いバルブです。さらにハンドルの長さを変更できるので、液化窒素の配管などで厚めの保冷をする場合でも操作できます。

しかし、基本的には中間開度で使用できないので全開か全閉で使うバルブとなります。

開閉はストロークが大きいので頻繁に操作するバルブには向きません。

ゲート弁の使用箇所
  • 高温・高圧のところ
  • 開閉だけで良いところ
  • 液化ガス配管などの保冷が必要でハンドル長を長くしたいところ
ゲート弁の利点
  • 圧力損失が小さい。
  • 締切性能が良い。
  • バルブハンドルの長さを変更可能。
ゲート弁の欠点
  • 流量調整はできない。
  • 開閉時間が長い。
  • 異常昇圧を起こす時がある。

ベローズ弁、ダイヤフラム弁

ベローズ弁、ダイヤフラム弁
ayvaz.com

ベローズ弁は構造的にはグローブ弁と非常に似ています。違うのがベローズと呼ばれる伸縮性のある筒が内部に入っており、バルブハンドルを操作した時は弁棒がこのベローズを押してバルブの開閉を操作します。

ベローズ弁の最も特徴的なところは外部リークがほとんどないところです。通常のグローブ弁はグランドパッキンなのでどうしてもリークが発生しますが、ベローズ弁はベローズでシールしているので外部リークがほぼありません。

このベローズは大体金属ですが、これをゴムやPTFEにしたものがダイヤフラム弁となります。ダイヤフラム弁の場合は少し違うのはベローズは蛇腹状に伸縮しますが、ダイヤフラムの場合は素材の弾性を使用します。

そのため元々ベローズ弁も圧力損失が大きいですが、ダイヤフラム弁はさらに大きくなるので圧力損失に注意する必要があります。

ベローズ弁、ダイヤフラム弁の使用箇所
  • 腐食性流体・毒ガスなどの外部リークが許されないところ
  • 締切性能が求められるところ
  • 圧力損失を気にしないところ
ベローズ弁、ダイヤフラム弁の利点
  • 外部リークがない。
  • ダイヤフラム弁は腐食性流体などでも使用可能。
  • 密閉性が高い。
ベローズ弁、ダイヤフラム弁の欠点
  • 圧力損失が大きい。
  • グローブ弁と比べると高価になる。

バタフライ弁

バタフライ弁

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バタフライ弁は操作自体はボール弁と同様に90°回転させるだけで操作できる弁です。全開、全閉もできて流量調整もある程度可能な弁となります。

さらに大口径でもボール弁と比べると軽量で軽いです。しかし、全開でも内部に弁体が残るので異物のある流体には使用できません。

非常に面間が小さくコンパクトなバルブとなります。

バタフライ弁の使用箇所
  • 大口径のボール弁の代替(ただし異物は✖️)
  • 一般的な水やガスなどのライン
  • 流量調整が必要なところ
バタフライ弁の利点
  • 操作が簡単。
  • 圧力損失が低い。
  • 流量調整もある程度可能。
  • コンパクト。
バタフライ弁の欠点
  • ものによっては密閉性が悪い。
  • 外部リークがある。
  • 面間が狭いのですぐにエルボなどが来ないように注意する。

自動化について

バルブは空気圧や電動モーターで動かすことにより、自動で開閉できるものがあります。

これらのバルブは現在の自動化されたプラントに欠かせませんが、アクチェーターや電磁弁などが壊れると一気に使用不可能になります。

また、リミットスイッチや近接スイッチで開閉のアンサーを取ることも可能ですが、スイッチが壊れアンサーが返ってこない(アンサー異常)を起こす場合もあります。

そのような時にどのように対処するか?どのように交換するか?どのようにソフト側でアラームを出すかを考えておかないと、大きな事故につながります。

そのため

自動化する際の注意点
  1. アクチェーターの取り付け方向は正しいか?
  2. ノルマルオープン(NO)、ノルマルクローズ(NC)どちらで制御するのか?
  3. 自動弁が壊れた際に交換は可能か?一次側もしくは二次側に手動弁は必要ないのか?
  4. 開閉アンサー異常が起きた際にどのように止めるか?
  5. 計装空気の供給圧力は問題ないか?
  6. バルブ開閉に5秒以上のインターロックをかけているか?(バルブは一瞬で開閉できないので、インターロックがないとバルブが壊れる可能性がある。長さはバルブの種類によります。)
  7. スピードコントローラー、クイックエギゾーストなどのオプションは正しく取り付けられているか?

などなど、考えればもっといっぱいあるでしょうがこれだけいろいろ考えて設置する必要があります。

自動化すればすべて解決!ではなくて万が一のトラブルの場合にも十分対処できるようにしましょう。

トラブル事例

実際に私が経験したバルブのトラブル事例です。どのトラブルもよく考えれば簡単に防げますが、気をつけないとバルブもトラブルの元になるので注意が必要です。

緩衝材の取り忘れ

何を思ったのかバルブの中に入っている緩衝材を取り忘れて配管を接続してしまい、流体が流れないということが発生したことがあります。

取り付ける人次第というところにもよりますが、必ず内部を確認して異物がないことを確認してから取り付けることが必要です。

外部リークによる漏れ

グローブ弁やバタフライ弁は構造上、グランド部から外部リークが発生することがあります。

もちろん納入時はグランド部は締め付けられているので漏れはないはずなのですが、一度バルブユニットの気密試験をしたところグランド部から漏洩したことがあります。

それからは多少ハンドルが重くなってもグランド部を増し締めしてから使用するようにしています。

逆にグランド部からの漏れであればすぐ治るのでとても便利なんですけど・・・。

グローブ弁を取り付ける際はバルブを全閉時にグランド部が加圧されない、真空状態になるのであればグランド部から空気を吸わないような設置が必要です。

大口径手動ボール弁

何を思ったのかバルブユニットの中で150Aのボール弁を人の手が届かないところに設置した人がいました。

150Aにもなるとハンドルにパイプをかけないと重くて開けれないのにさらに高所という最悪な状況。

結局そんなに開閉頻度ないということでそのまま使用しましたが・・・普通の水用のバルブなのでバタフライ弁の使用を検討すべきでしたね。

自動弁の動作不良

工場の自動化でバルブを自動化したところ突然開閉不能に。調べるとサイレンサーの部分に水がかかり、電磁弁内部に水が侵入し動作不良を起こしていました。

電磁弁がいくらIP65とかの高級仕様でもサイレンサーの位置などを気をつけないとこのようなことが起こりかねないので、注意が必要です。

バルブの選定とトラブル対策-現場で起きた故障事例と対処法

まとめ

バルブに関して簡単に解説しました。バルブはその種類も多く使用用途によっては全く向かないバルブもあるので、この記事を読んで正確な選定ができるようにしてほしいと思います。

特に自動弁は購入の仕方を誤ると思ったような制御ができなくなるなどの問題が起きるので十分に注意しましょう。

絵とき「バルブ」基礎のきそ (Mechanical Engineering Series)

バルブの選定とトラブル対策-現場で起きた故障事例と対処法

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