硬質ポリ塩化ビニル管(塩ビ管)は、冷却水・排水・薬液・井水などの配管材として工場内で広く使用されています。腐食しない、軽量である、接着接合で施工できるという利点があり、鋼管に比べて材料費・施工費とも安価です。
一方で、破損事故の報告も多い配管材です。破損の多くは配管そのものの強度不足ではなく、使用条件や施工手順が規格の想定から外れていたことに起因します。
本記事では、塩ビ配管の破損要因を「紫外線」「薬液・有機溶剤」「熱伸縮」「施工不良」「水撃圧・低温」の5つに分類し、それぞれのメカニズムと現場での確認方法を整理します。設備保全および生産技術の担当者が、日常の巡回点検で使える着眼点を提示することを目的としています。
1. 塩ビ管の種類と使用条件
現場では「VP」「VU」「HI」「HT」といった記号が用いられます。これらは肉厚と材質の違いを表しており、使用できる圧力と温度が異なります。
1-1 VP管とVU管の違い
一般流体輸送用の塩ビ管は、JIS K 6741「硬質ポリ塩化ビニル管」 に規定されています。
| 記号 | 正式名称 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| VP | 硬質ポリ塩化ビニル管(厚肉) | 肉厚が厚い | 圧力のかかる配管、給水 |
| VU | 硬質ポリ塩化ビニル管(薄肉) | 肉厚が薄い | 排水、通気(無圧) |
| VM | 同上(中間の肉厚) | 大口径向け | 農業用水など |
| HI-VP | 耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管 | ゴム成分の添加により耐衝撃性を向上 | 寒冷地、衝撃荷重を受ける箇所 |
| HT(HTVP) | 耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管(JIS K 6776) | 90℃まで使用可能 | 給湯、温水 |
VP管とVU管は外径が同一で、肉厚のみが異なります。呼び径100の場合、VPの肉厚は6.6mm、VUは4.1mmです。外観が似ているため、現場の残材を流用する際に取り違えると、必要な耐圧性能を満たさない配管が施工されることになります。管の刻印で管種を確認する手順を、施工要領に含めておく必要があります。
1-2 使用圧力と使用温度の範囲
配管メーカーが公表している一覧表では、管種ごとに使用条件が規定されています。
| 管種 | 用途 | 圧力 | 使用温度範囲 |
|---|---|---|---|
| VP(水道用・JIS K 6742) | 上水道管 | 使用圧力 0.75MPa(静水圧) | 常温(5〜35℃) |
| VP(JIS K 6741) | 圧送管(水) | 設計圧力 1.0MPa(静水圧+水撃圧) | 常温(5〜35℃) |
| VP(JIS K 6741) | 無圧管(外圧なし) | ― | 5〜60℃ |
| VU(JIS K 6741) | 圧送管(水) | 設計圧力 0.6MPa | 常温(5〜35℃) |
| HT(呼び径50以下) | 圧送管(水) | 1.0MPa(5〜40℃)/0.6MPa(41〜60℃)/0.4MPa(61〜70℃)/0.2MPa(71〜90℃) | 5〜90℃ |
(出典:硬質ポリ塩化ビニル管の管種別の圧力と使用温度範囲一覧表|クボタケミックス)
特に注意すべき点は、圧力がかかる用途の使用温度範囲が5〜35℃に限定されていることです。屋外配管では日射によって管表面温度が外気温を上回るため、夏季にこの範囲の上限を超える場合があります。また、冬季の早朝には下限の5℃を下回る地域もあります。
耐熱塩ビ(HT管)では、使用温度に応じて設計圧力が段階的に低減されます。呼び径50以下の場合、5〜40℃で1.0MPa、71〜90℃では0.2MPaとなり、高温側では1/5の値になります。金属配管では常用温度域でこれほどの圧力低減は生じないため、樹脂管を扱う際には温度と許容圧力の対応を設計時に確認する必要があります。
2. 塩ビ管と鋼管の物性比較
塩ビ配管のトラブルの多くは、鋼管を前提とした設計・施工の考え方をそのまま適用したことに起因します。両者の物性差を数値で把握しておくと、どの項目に注意すべきかが明確になります。
2-1 主要物性の対比
| 項目 | 硬質塩ビ(VP) | 炭素鋼(SS400など) | 比率 |
|---|---|---|---|
| 縦弾性係数(ヤング率) | 約 3,334 MPa | 約 206,000 MPa | 約 1/62 |
| 線膨張係数 | 約 7×10⁻⁵ /℃ | 約 1.2×10⁻⁵ /℃ | 約 5.8倍 |
| 引張降伏強さ | 49〜50 MPa | 約 245 MPa | 約 1/5 |
| 密度 | 1.43 g/cm³ | 7.85 g/cm³ | 約 1/5.5 |
| 熱伝導率 | 0.20〜0.21 W/(m·K) | 約 50 W/(m·K) | 約 1/250 |
(物性値の出典:硬質塩化ビニル管の諸性能表|アロン化成 参考資料、排水用塩ビ管の熱伸縮量|クボタケミックス)
この表で実務上の影響が大きいのは、上の2行です。塩ビ管は鋼管の約1/62の剛性しかなく、温度変化に対しては約5.8倍伸縮します。以降で扱う破損要因のうち、たわみと熱伸縮はこの2つの物性値から説明できます。
2-2 【試算①】自重によるたわみ
剛性が低いということは、自重で変形しやすいということです。実際の数値を確認します。
条件:VP100A(外径114mm・肉厚6.6mm)、満水、単純支持
- 管の重量:3.18 kg/m
- 内部の水の重量:7.98 kg/m
- 合計:11.2 kg/m
- 断面二次モーメント I = 約 3.22×10⁶ mm⁴
- ヤング率 E = 3,334 MPa
たわみの式 δ = 5wL⁴ ÷ (384EI) から、支持間隔ごとのたわみは次のようになります。
| 支持間隔 L | たわみ δ |
|---|---|
| 1.0 m | 0.13 mm |
| 1.5 m | 0.67 mm |
| 2.0 m | 2.12 mm |
支持間隔を1mから2mに広げると、たわみは16倍になります。たわみはスパンの4乗に比例するためです。
さらに、樹脂材料にはクリープ(一定荷重下で変形が時間とともに進行する現象)があります。金属配管では常温でほとんど問題になりませんが、塩ビ管では施工直後のたわみが経年で拡大します。
一般的な目安として、塩ビ管の支持間隔は呼び径15〜50で1.0m以下、65〜300で2.0m以下とされ、鋼管より短く取ることが推奨されています。この基準は破壊強度ではなく、たわみとクリープを抑制することを目的としています。
温水を流す系統では、温度上昇によって弾性係数が低下するため、支持間隔をさらに短くする必要があります。常温を前提とした支持間隔表をそのまま温水系統に適用しないよう注意が必要です。
配管サポートの設計手順については、次の記事で詳しく扱っています。
【プラント配管設計の基礎】これで完璧!配管サポートの考え方!
3. 原因1:紫外線による表面の脆化
屋外に露出した塩ビ管では、日射を受ける面の色が白色または黒色に変化することがあります。これは紫外線劣化が進行している状態を示しています。
3-1 劣化のメカニズム
ポリ塩化ビニルは紫外線を受けると分子鎖が切断され、酸化劣化反応が進行します。その結果、管の表面層に次の変化が生じます。
- ボイド(微細な空洞)の生成
- ポリエン構造の生成(着色の原因となる)
- 脆性の増大
これにより表面層が硬化し、もろくなります。光の乱反射や吸収特性が変化するため、外観上は変色として現れます。
健全な塩ビ管は、外部からの衝撃を弾性変形によって吸収します。表面が脆化した管ではこの吸収能力が低下するため、飛来物の接触、熱収縮による応力、近接工事の振動といった外力で破損に至る場合があります。
3-2 通常の点検では検出しにくい理由
紫外線劣化は管表面のごく薄い層で進行します。このため、水圧試験では異常が現れず、肉厚測定でも減肉として検出されません。
現場で確認できる指標は、外観の色調です。日射を受ける面と受けない面(管の裏側)を比較し、色の差が生じていれば劣化が進行している状態です。
3-3 紫外線劣化への対策
一般的な対策は次の3つです。
- 塗装する ― 塗膜の剥離により効果が失われるため、定期的な塗り直しが前提となります
- 日よけ・保護カバーを設置する ― カバー自体の破損点検が必要です
- 耐候性を高めた製品を採用する ― 外層に耐候性樹脂をコーティングした多層構造の管が各社から供給されています
塗装や保護カバーは初期費用を抑えられますが、剥離や破損の補修が継続すると、ライフサイクルコストでは不利になる場合があります。更新や新設の計画段階では、屋外での露出配管を避けられる経路がないかを先に検討することが推奨されます。
配管の防食全般については、次の記事で扱っています。
4. 原因2:薬液・有機溶剤による膨潤と劣化
「塩ビは耐薬品性に優れる」という説明は、対象となる薬品の種類によって成否が分かれます。酸・アルカリに対する耐性と、有機溶剤に対する耐性は大きく異なります。
4-1 酸・アルカリと有機溶剤で挙動が異なる
耐薬品性表を確認すると、傾向が明確に分かれます。
◎(全く浸食されない)に分類されるもの
- 塩酸 35%(20〜40℃)、硫酸 60%(20〜40℃)、次亜塩素酸 10%(20〜40℃)
- 水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、石灰乳
- 海水・塩水、大半の金属塩化物・硝酸塩・硫酸塩
- 油・脂肪、グリセリン、エチルアルコール
×(浸食される)に分類されるもの
- アセトン、ケトン類、アセトアルデヒド
- トルエン 100%、ベンゼン、芳香族炭化水素
- クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、メチレンクロライド
- ラッカーシンナー、エチルエーテル、酢酸エステル
- 可塑剤、可塑剤入りシール剤
- 硝酸 95%、ピクリン酸
- 木材防腐剤(クレオソート)、白あり駆除剤、アスファルトプライマー
(出典:硬質塩化ビニル管の耐薬品性(参考)|アロン化成 参考資料)
塩ビ管が苦手とするのは有機溶剤です。エーテル、ケトン、フェノール類、炭化水素系の溶剤に接触すると、膨潤・軟化により強度が低下し、亀裂の発生と漏水に至ります。
4-2 外面からの溶剤侵入
有機溶剤による劣化は、管の内部を流れる流体だけが原因ではありません。管の外面から侵入する経路があります。
積水化学のFAQには、次の事故事例が示されています。
破裂した塩ビ管を調べるとシンナー臭く、触ると柔らかくなっています。原因は何ですか? → 塩ビ管、継手に有機溶剤(シンナーなど)が接触し、塩ビが浸されて強度が低下したため、水圧に耐え切れず破裂したと考えられます。
工場で想定される経路には、次のようなものがあります。
- 塗装ブースの近傍に塩ビ製の冷却水配管が敷設されている
- 洗浄用シンナーをこぼした床面の下に、埋設された塩ビ管がある
- 配管ピットに乳剤系の除草剤を散布した(乳剤系には有機溶剤を多量に含むものがある)
- 塩ビ管の近傍でアスファルト防水工事を実施した
いずれも搬送する流体とは無関係です。薬液適合性の検討は、配管の内容物だけでなく設置環境についても行う必要があります。
4-3 溶剤膨潤の外観上の特徴
溶剤膨潤を起こした塩ビ管には、次の特徴が現れます。
- 管が変形し、裂けている
- 異臭(シンナー臭など)がする
- 触れると、堅めの園芸用ビニルホースに近い感触になる
- 表面の平滑さが失われている
- 管に爪を押し付けると、爪痕が残る
最後の項目は、工具を使わずに確認できます。健全な塩ビ管は硬く、爪を押し付けても痕が残りません。爪痕が残る状態であれば、強度が低下していると判断できます。
4-4 添加剤に起因する劣化
塩ビ管の劣化には、基材となる樹脂そのものではなく、添加剤が関与する場合があります。
- VP管には成型補助剤として無機物が添加されています。塩酸に長期間さらされると無機物が溶出してボイドが形成され、薬液の浸透が進行します
- HI管には衝撃改質剤としてゴム成分が添加されています。高濃度の硫酸にさらされるとゴム成分が酸化劣化し、膨潤・発泡によって衝撃強度が低下します
- HT管には耐熱性向上のためCPVC樹脂が使用されています。苛性ソーダ(NaOH)環境ではクラックや変色が発生する場合があります
耐衝撃性や耐熱性を高めたグレードが、すべての流体に対して有利になるわけではありません。流体に応じた管種の選定が必要です。
配管材質の選定手順については、次の記事で扱っています。
【プラント配管】色々あって困る!プラント配管材質の選定について解説!
5. 原因3:熱伸縮による継手への負荷
塩ビ配管のトラブルのうち、発生件数が多いのが熱伸縮に起因するものです。
5-1 【試算②】温度差による熱伸縮量
塩ビ管の線膨張係数は 7×10⁻⁵/℃ です。温度が10℃変化すると、1mあたり0.7mm伸縮します。
屋外の20m直管について、冬季の早朝0℃から夏季の日射下50℃まで変化した場合(ΔT=50℃)を計算します。
- 塩ビ管:7×10⁻⁵ × 20,000mm × 50℃ = 70 mm
- 鋼管(比較):1.2×10⁻⁵ × 20,000mm × 50℃ = 12 mm
同一条件で、塩ビ管は鋼管の約5.8倍の伸縮量となります。両端を固定した場合、この変位はどこかで吸収される必要があります。
5-2 【試算③】拘束したときに発生する熱応力
完全に拘束した状態で発生する熱応力は σ = E × α × ΔT で求められます。
| 材料 | 1℃あたりの熱応力 | ΔT=30℃のとき |
|---|---|---|
| 塩ビ(VP) | 0.233 MPa/℃ | 7.0 MPa |
| 炭素鋼 | 2.472 MPa/℃ | 74.2 MPa |
塩ビ管の熱応力は鋼管の約1/10です。剛性が低いため、拘束しても発生する応力は小さくなります。
5-3 【試算④】常用応力と熱応力の合計が安全率に与える影響
塩ビ管は常用状態での応力余裕が鋼管ほど大きくありません。VP100A(外径114mm・肉厚6.6mm)に設計圧力1.0MPaが作用したときの円周(フープ)応力は次のとおりです。
σ = P(D−t) ÷ 2t = 1.0 ×(114−6.6) ÷ (2×6.6) = 8.14 MPa
引張降伏強さ49MPaに対して、安全率は約6となります。ここに熱応力7.0MPaが加わると、次のようになります。
8.14 + 7.0 = 15.1 MPa 安全率 = 49 ÷ 15.1 ≒ 3.2
安全率は約6から約3.2に低下します。紫外線劣化や薬液劣化によって材料強度が低下している場合、あるいは継手部に応力集中がある場合には、この余裕がさらに減少します。
なお、これらは単純化したモデルによる筆者の試算です。実際の設計では、管種・温度条件・継手形状に応じたメーカーの技術資料を参照してください。
5-4 熱伸縮が継手に与える変位と対策
実務で発生頻度が高いのは、応力そのものよりも変位に起因するトラブルです。
70mm変位する配管が、固定された継手やサポートを押し引きします。塩ビ管の継手は接着接合であるため、繰り返し変位を受けると接着面に微細な剥離が生じ、そこから漏水します。
配管メーカーも、この点を注意事項として示しています。
排水配管には季節・昼夜の気温変動や排水の温度変化で管路に伸縮力が加わります。継手部が破損するなどの事故を防止するため、必ず熱伸縮処理(伸縮継手の設置)を実施してください。
対策は次の3点です。
- 伸縮継手(ビニル差込ソケットなど)を適切な間隔で設置する
- 固定点(アンカー)と可動点(ガイド)を図面上で明確に区分する ― すべての支持金具を締め付けると、伸縮を吸収する箇所がなくなります
- 屋外・直射日光下では温度差を大きめに設定する ― 日射により管表面温度は外気温を20℃程度上回る場合があるため、外気温のみで計算すると変位量を過小評価します
配管の熱変化対策の考え方は、材質を問わず共通します。詳細は次の記事で扱っています。
【プラント配管設計】知らないと壊れる!?配管設計における重量と熱変化対策の徹底解説
6. 原因4:TS接合の施工不良
塩ビ配管の接合は、外見上は接着剤を塗って差し込むだけの作業です。ただし、接着の原理に基づいた手順が定められており、これを外れると接合強度が確保されません。
6-1 TS接合の原理
TS接合の「TS」は Tapered Solvent Joint の略です。テーパ状の受け口をもつ継手と管の両接合面に接着剤を塗布し、表面を膨潤させて接合します。
ここで使用する接着剤は塩化ビニル溶剤です。塗布すると表面が溶解膨潤して約0.1mmの膨潤層が形成され、接着剤を塗布せずに差し込んだ位置(ゼロポイント)より深く挿入できるようになります。これを流動差込みといいます。
さらに力を加えると、塩ビの弾性により管が縮径し継手が拡径するため、より深く挿入できます。これを変形差込みといいます。押し込みによって後方にはみ出した接着剤が隙間を充填し、その隙間が0.2mm以下であれば接合強度が保持されます(はみだし接合)。
(原理の出典:硬質ポリ塩化ビニル管:差込み接着接合法(TS接合法)|モノタロウ 建築設備配管工事の基礎講座)
6-2 施工不良として発生しやすい5項目
(1) 面取りを行わない
切断面のバリが残っていると、挿入時に継手内面の膨潤層をかき取ります。膨潤層が失われると接着強度が低下します。かき取られた樹脂が水みちを形成して漏水する場合や、継手内部を閉塞して流量が確保できなくなる場合もあります。管厚の1/2程度(約15°)の糸面取りが必要です。
(2) 挿入後に保持しない
受け口はテーパ形状であるため、押し込む力を解除すると管が押し戻されます。抜け戻ると接着強度が低下し、通水後の水圧で抜ける場合があります。保持時間の目安は次のとおりです。
- 呼び径50A以下:30秒以上
- 呼び径75A以上:60秒以上
- 冬季はこの2倍程度
(3) ひねりながら差し込む/叩き込む
ひねり挿入では接着剤の膜厚が偏ります。叩き込みは継手に大きな残留応力を生じさせ、後日その部位から破損する原因となります。いずれも行いません。
(4) 接着剤を過剰に塗布する
冬季に継手内面へ接着剤を過剰塗布すると、管内に充満した溶剤蒸気が滞留し、内面に亀裂が発生する事故につながります。塗布量を適正に管理し、はみ出した接着剤を拭き取り、管内の通風状態を確保します。
(5) 接着後すぐに通水する
接着強度が発現するまでには時間を要します。通水開始は最低8時間後が目安となります。
なお、HI-VP管とHT管には専用の接着剤が設定されています。汎用品を使用した場合、接着強度は保証されません。夏季の炎天下や大口径管では、乾燥速度を遅くした専用接着剤を使用します。
7. 原因5:水撃圧と低温脆化
7-1 【試算⑤】バルブ急閉時の水撃圧
VP管の設計圧力1.0MPaは、静水圧0.75MPaと水撃圧0.25MPaの合計として設定されています。
バルブを急閉したときに発生する水撃圧を、ジューコフスキーの式 ΔP = ρ・a・Δv で計算します。管内を伝わる圧力波の速度 a は管の剛性に依存するため、塩ビ管では鋼管より小さい値となります。
| 管種 | 圧力波速度 a | 流速1m/s→0の水撃圧 | 流速2m/s→0の水撃圧 |
|---|---|---|---|
| 塩ビ VP100A | 約 421 m/s | 0.42 MPa | 0.84 MPa |
| 鋼管 SGP100A | 約 1,304 m/s | 1.30 MPa | 2.61 MPa |
塩ビ管の水撃圧は鋼管の約1/3です。ただし、流速1m/sからの急閉で0.42MPaとなり、規格で想定されている水撃圧0.25MPaを上回ります。流速2m/sでは0.84MPaとなり、静水圧0.75MPaと合計すると設計圧力1.0MPaを超えます。
水撃圧の絶対値は鋼管より小さい一方で、許容できる圧力も小さいため、余裕が確保されにくい構成になっています。対策としては次のとおりです。
- ボールバルブや電磁弁の急閉を避ける(電動弁では閉止時間を長めに設定する)
- 管内流速を過大にしない(塩ビ管では1.5〜2m/s以下を目安とする場合が多い)
- ポンプの急停止(停電、インターロック作動)を想定した検討を行う
- 必要に応じて水撃防止器やサージタンクを設置する
バルブの閉止速度に関する運用ルールを定めるだけで防止できる事例も少なくありません。
7-2 低温側の使用限界と凍結
1-2の表に示したとおり、塩ビ管の使用温度範囲の下限は5℃です。上限だけでなく下限も規格で規定されています。
塩ビは低温になるほど脆性が増します。氷点下の屋外で工具等が接触した場合、常温では問題とならない程度の衝撃でも破損する場合があります。寒冷地や衝撃荷重を受ける箇所に耐衝撃性のHI-VP管が設定されているのは、この特性に対応するためです。
凍結による破損も発生します。水は凍結時に体積が約9%増加し、この膨張力によって管が破壊されます。対策は次のとおりです。
- 屋外および非暖房エリアの水配管は、冬季に水を抜く(水抜き弁の位置を図面で確認しておく)
- 水抜きができない配管には保温とヒーティングを施工する
- 前年の実績のみを根拠に凍結対策を省略しない
8. 目視点検の着眼点
工具を使わずに、巡回時に確認できる項目を整理します。
8-1 外観で確認する項目
- □ 日射を受ける面と受けない面で色調に差がないか(白化・黒化は紫外線劣化の指標)
- □ 管が垂れていないか(支持間隔不足、クリープ、温度上昇の可能性)
- □ 継手の近傍に微細なひび(ヘアクラック)がないか
- □ 塗装や保護カバーが剥離していないか
- □ 支持金具がすべて固定されていないか(伸縮を吸収する箇所が確保されているか)
- □ 直管長に対して伸縮継手が設置されているか
- □ 屋外やピット内の近傍に、塗料・溶剤・アスファルト材が保管されていないか
8-2 触感・臭気で確認する項目
- □ 爪を押し付けて痕が残らないか(残る場合は溶剤膨潤の可能性が高い)
- □ 触れたときに、ビニルホースに近い柔らかさがないか
- □ シンナー臭がしないか
8-3 運用状況の聞き取り
- □ バルブの閉止操作の速度(水撃圧)
- □ 冬季の水抜きの実施状況(凍結)
- □ 搬送している流体の種類(薬液適合性)
- □ 近傍での塗装工事・防水工事の履歴(溶剤)
最後の項目は特に重要です。塩ビ配管の破損事故では、配管そのものではなく周辺で行われた作業が起点となっている場合があります。
9. メーカーによる劣化診断
残存寿命の評価については、配管メーカーが診断サービスを提供しています。更新計画を立案する際の根拠として利用できます。
9-1 紫外線劣化の診断
酸化劣化反応によって生じる異常構造の割合を測定し、表面の酸化劣化の度合いを分析する方法です。
- サンプルは管の変色部分を薄く削り取ったもの(長さ30mm以上×幅3mm以上×3本、約5mg)
- 配管内の流体を止めず、抜管せずに診断できる
採取するのは表面のごく薄い層であるため、使用上の影響はありません。運転を継続したまま残存寿命を推定できる点が特徴です。
9-2 薬液劣化の診断
こちらは配管を抜き取り、試験片で評価します。
| 試験項目 | 評価できる内容 |
|---|---|
| 引張降伏強度 | 許容水圧に対する安全率の低下 |
| 引張破断伸び | 振動や伸縮に追随する能力の低下 |
| 偏平試験 | 外部からの変形に対する耐性の低下 |
| 衝撃試験 | 外部からの衝撃荷重に対する耐性の低下 |
| 減肉測定 | 強度に影響する肉厚の減少量 |
| 内面観察 | ひび割れの起点となる微細亀裂の有無 |
| 断面変色層 | 肉厚方向の薬液浸透深さ |
判定はA〜Dの4段階(A:ほとんど劣化なし/B:若干の劣化、3年以内の更新推奨/C:劣化あり、2年以内の更新推奨/D:顕著な劣化、早期更新推奨)で示されます。必要なサンプル長は呼び径13〜40Aで700mm以上、50〜300Aで500mm以上が目安です。
系統ごとの診断結果を更新の優先順位付けに用いると、限られた保全予算の配分根拠を定量的に説明できます。
非破壊で状態を把握するという考え方については、次の記事で扱っています。
10. まとめ
塩ビ配管の破損要因を5つに整理すると、次のとおりです。
| 原因 | メカニズム | 現場での確認方法 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 1. 紫外線 | 分子鎖切断による表面の脆化 | 日射面の変色 | 塗装、日よけ、耐候性グレード |
| 2. 薬液・溶剤 | 膨潤、軟化、ボイド生成 | シンナー臭、爪痕 | 適合性確認、迂回、さや管 |
| 3. 熱伸縮 | 20m・ΔT50℃で70mmの変位 | 継手の変形、支持金具の変形 | 伸縮継手、固定点と可動点の区分 |
| 4. 施工不良 | 膨潤層の破壊、抜け戻り | 継手からの漏れ | 面取り、保持時間、専用接着剤 |
| 5. 水撃・低温 | 設計水撃圧の超過、凍結 | バルブ急閉、冬季の破損 | 閉止時間、流速管理、水抜き |
実務上の要点は次の3点です。
- 塩ビ管の剛性は鋼管の約1/62、線膨張係数は約5.8倍となる。支持間隔と熱伸縮処理は、鋼管の基準をそのまま適用できない
- 圧力用途の使用温度範囲は5〜35℃である。屋外配管では夏季・冬季にこの範囲を外れる場合がある
- 爪を押し付けて痕が残る管は、溶剤膨潤により強度が低下している可能性が高い
日射面と日陰面の色の差、および爪痕の有無は、工具を使わずに確認できる項目です。巡回点検の着眼点として活用してください。
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参考書籍
配管の基礎知識を体系的に整理するための書籍を挙げます。
- トコトンやさしい配管の本(今日からモノ知りシリーズ)/西野悠司 図解中心の構成で、配管の全体像を短時間で把握できます。
- トラブルから学ぶ配管技術/西野悠司 トラブル事例から要因を解説する構成です。本記事の内容と対応する項目が多く含まれます。
- 絶対に失敗しない 配管技術100のポイント/西野悠司 実務上の判断基準を項目別に確認できます。
- わかる!使える!配管設計入門/西野悠司 設計業務を担当する段階で参照する内容が中心です。
- 配管の本(入門・機械&保全ブックス)/日本プラントメンテナンス協会 保全側の視点で構成されており、点検・更新計画の立案に対応します。


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