配管設計においては、重量や温度変化による膨張・収縮を考慮することが、プラント配管の長期的な信頼性を確保するために重要です。配管が輸送する流体の種類、温度、外部環境条件などにより、配管にかかる負荷が変動し、適切な対策を取らなければ配管や関連機器に深刻なダメージを与える可能性があります。
ということで今回は、配管設計における重量負荷および熱膨張・収縮への対応について解説、特にコーナー、伸縮ループ、タコベンド、ベローズ型伸縮継手の使用方法に焦点を当てます。
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1. 配管の重量に対する設計
プラント配管では流体の重さや設備自体の重量、そして屋外に設置する場合は積雪や凍結など外部の環境条件に応じた負荷がかかります。このような負荷に対応するためには、適切なサポートが必要不可欠です。
特に大型の配管や長距離にわたる配管では、適切なサポートを設け、重量が集中しないように設計しなければ、配管の破損やそれに伴うプラント全体の停止につながるリスクがあります。
1.1 静荷重と動荷重
配管には2種類の荷重が存在します。
- 静荷重: 配管自体の重さ、保温材、計装品などによる恒久的な負荷。
- 動荷重: 流体の流動による変動負荷や、季節的に変わる雪や氷の負荷。
これらの荷重は、適切なサポートが設置されていない場合、配管が過度にたわむ、曲がる、あるいは破損するリスクがあります。特に高所に設置された配管や大口径の配管には、重力の影響が大きいため十分な強度を持つサポートを適切な間隔で設置することが重要です。
支持方法にはさまざまな手段があり、溶接タイプのサポートや、スライドシュー、ローラーサポートなど、配管の動きに応じて適切なサポートを選定する必要があります。
1.2 配管の支持方法
配管支持には、単純に配管を固定するタイプから、スライドサポートやローラーサポートが使われることもあります。スライドサポートは配管が熱膨張や収縮に伴って軸方向に伸縮する際に適しており、摩擦による応力を最小限に抑える役割を果たします。一方、ローラーサポートは配管の動きをより滑らかにし、配管にかかる負荷を軽減する効果があります。
また、大型配管や特殊な環境では、配管の材質や設置場所に応じて異なる支持方式が選ばれます。例えば、寒冷地や湿潤な環境では、耐腐食性を考慮することが重要です。これにより、配管の破損リスクを減少させることができます。
配管サポートについては別記事で詳しく解説していますので、そちらを参考にしてください。
2. 熱膨張と熱収縮に対する考慮
プラント配管は温度変化を受けると熱膨張や熱収縮が発生し、その結果として応力が生じます。金属は熱で膨張・収縮しますから当然ですよね。
この応力を放置すると配管や機器に過剰な負荷がかかり、破損のリスクが増大します。特に高温の流体を扱う場合や寒冷地での設置においては、熱変位への対策が非常に重要です。
例えば蒸気配管や液体窒素などを扱う配管です。片方は高温、もう片方は低温ですが両方とも配管を伸縮させます。これにより配管には応力が発生しますので、適切に対策をしないとプラント配管の破損から最悪の場合はプラントの停止につながります。
2.1 熱膨張とその影響
温度変化によって配管の長さが伸縮します。例えば、鋼製配管では、温度が100℃変化するごとに1メートル当たり約1mmの膨張が生じます。この膨張が設備や接続機器に影響を与える可能性があるため、配管の設計には十分なフレキシビリティを持たせる必要があります。
配管が熱膨張や収縮による応力を受け続けると、特に接続部やフランジ部で応力が集中し、破損やリークの原因となります。そのため、温度変化が大きい配管システムでは、あらかじめ熱変位を考慮した設計が必要です。
2.2 熱膨張に対する対策
熱膨張に対しては、次のような対策が一般的に採用されます。
- 配管ルートの工夫: 配管を曲げたり、ループ状にすることで、膨張や収縮による応力を吸収します。これにより、配管の伸縮が直線的に影響を与えず全体に分散されるため、応力が軽減されます。
- エキスパンションジョイント: ベローズ型伸縮継手などを使用して配管の伸縮を吸収し、接続部への負荷を軽減します。エキスパンションジョイントは伸縮に応じて設計されており、特に蒸気配管や化学プラントの高温配管に広く使用されています。後ほど解説もしますが、タコベンドなどに比べてスペースも取らず取り付けるだけで使用可能です。しかし、サポートの設置などに注意する必要があります。
エキスパンションジョイントは熱膨張や振動に対して柔軟に対応できるため、特に配管の接続部や固定点にかかる応力を効果的に分散させる手段として重要です。内部の流体圧力や外部の衝撃に対しても適応できる設計となっており、配管システム全体の安全性を確保する役割を果たします。
3. 熱収縮対策: コーナー、伸縮ループ、タコベンド、ベローズ型伸縮継手
熱収縮は特に高温配管や低温の流体を扱う配管で重要な課題です。配管の温度が変化すると収縮し設備に不要な応力がかかります。これを防ぐためには、以下のような対策が取られます。
3.1 コーナー(曲げ加工)
コーナーや曲げ加工を施すことで直線的な膨張や収縮が起こる際の応力を分散させることができます。この方法では配管の曲がり部分で応力が吸収され、他の部分への負担を軽減します。
特に配管が長距離にわたる場合コーナーを設けることで、膨張収縮の影響を緩和することができます。また、平面的な配管レイアウトが可能なのでスペースに制限があるときに最適です。
3.2 伸縮ループ
U字型やL字型に配管を配置する「伸縮ループ」も、配管の熱変位を吸収するための効果的な手法です。この方法は長距離配管に特に適しており、膨張や収縮によるダメージを防ぎます。
よく「3エルボ法」「4エルボ法」とも呼ばれるものですね。管工事施工管理技士の試験でもよく問題として出題されます。例えば蒸気のヘッダー管から機器に伸びる配管などに使用されることが多いです。
3.3 タコベンド(タコ足曲げ)
タコベンドは配管をΩ状に曲げることで、熱膨張や収縮に対応する柔軟性を持たせる方法です。タコベンドは限られたスペースに余裕がある場合に有効です。
同一形状のものを多く使用する場合は製作効率が非常に上がります。プレハブで同じものを作ればいいだけなので、特に長距離配管に有効です。
3.4 ベローズ型伸縮継手
ベローズ型伸縮継手は熱膨張や収縮を吸収するために使われる金属製の伸縮継手です。ベローズの伸縮により、配管の熱膨張・熱収縮への対応が可能となります。
ただし圧力などに注意する必要があります。私も経験しましたが気密試験の時に誤ってベローズの体圧以上の圧力で加圧してしまい、ベローズが一瞬で変形したことがあります。ですので使用には設計圧力や設計温度に十分注意する必要があります。
配管設計では安全で効率的なシステムの運用を維持するために、重量や熱膨張・熱収縮に対する適切な対応が不可欠です。配管が輸送する流体の種類、温度、外部環境条件などによって、配管にかかる負荷が変動し、これに対処しなければ長期的な信頼性が損なわれる可能性があります。本記事では、配管設計における重量、熱膨張および収縮への対応について詳しく解説します。
まとめ
配管設計において重量や熱膨張・収縮への対応は、安全で効率的なプラント運用のために不可欠です。適切なサポートの設置や熱変位を吸収するための設計を導入することで、プラント全体の安定性を確保できます。
また、コーナー、伸縮ループ、タコベンド、ベローズ型伸縮継手などを活用することで、配管にかかる熱応力の負荷を軽減しプラント配管の安全性に寄与することができます。
近頃は転職サイトも非常に多いですが”エンジニア”向けの転職プラットフォームはあるのに、”プラントエンジニア”に特化したものはありませんでした。その為、総合転職サイトで求人を探してもなかなか見つかりにくい状況ですよね?そこでおすすめなのが「プラント特区」です。”プラント業界専門の転職求人プラットフォーム”ですのできっとあなたに合った求人が見つかるはずです。
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