【新人向け】工場の圧縮空気(エア)入門|φ1mmのエア漏れで年間約4.6万円・ドレン・圧力露点・省エネの基礎

現場では「エアが弱い」という申し出に対して、コンプレッサーの吐出圧力を上げるという対応が取られることがあります。しかしこの対応ではエネルギー消費が増加し、根本原因の解決にならない場合があります。圧力を上げれば漏れ量も増えるため、問題を表面的に隠したまま損失だけが拡大する結果になります。

圧縮空気(現場では「エア」「工場エア」と呼ばれます)は、電気・蒸気・水と並ぶ4大ユーティリティのなかで、単位エネルギーあたりのコストが最も高い流体です。一方で、漏れても異臭や汚れが出ないため、蒸気漏れや水漏れに比べて放置されやすいという特徴があります。

本記事では、設備保全・生産技術・プラントエンジニアリングに携わる方に向けて、圧縮空気のコスト構造、ドレンの発生機構、圧力露点の考え方、エア漏れの定量評価方法、配管設計上の留意点を、計算例とJIS規格を交えて整理します。本記事で紹介する計算例を把握しておくと、エア漏れの経済的影響を定量的に評価できるようになります。


目次

1. 圧縮空気のコスト構造

1-1. 工場電力に占めるコンプレッサーの割合

一般的な製造工場では、電力消費の約20〜25%をコンプレッサー(空気圧縮機)が占めると報告されています(株式会社エネテク)。工場によっては30%に達するケースもあります。

一方、工場のエアは平均で20%程度が漏れているという調査結果があります(工場ペディア by 豊安工業)。仮にコンプレッサー電力比率20%、漏れ率20%とすると、工場全体の電力消費の約4%が漏れに起因している計算になります。

この数値は工場規模や設備構成によって変動しますが、省エネルギー施策の優先順位を検討するうえで、圧縮空気系統が無視できない規模の対象であることを示しています。

1-2. 【試算①】圧縮空気1m³あたりの電力コスト

汎用的なスクリュー式コンプレッサーの所要動力は、吐出圧力0.7MPaGでおおよそ6〜7kW/(m³/min)です。ここでは6.5kW/(m³/min)を仮定します。

項目計算式結果
1m³あたりの電力量6.5kW ÷ 60min0.108 kWh/m³
1m³あたりの電力費0.108 kWh/m³ × 20円/kWh約2.2 円/m³

電気単価を20円/kWhとした場合、圧縮空気の単価は約2.2円/m³となります。この単価を把握しておくと、流量計の指示値からそのまま損失額を算出できます。


2. 圧縮空気を扱ううえでの基礎知識

コスト計算や機器選定の前提として、単位系と物性の理解が必要になります。

2-1. ゲージ圧力と絶対圧力

圧力の表示には2種類の基準があります。

種類基準表記例使用場面
ゲージ圧力大気圧を0とする0.7MPaG、0.7MPa(G)圧力計の表示、カタログ値
絶対圧力完全真空を0とする0.8MPaabs、0.8MPa(A)ボイルの法則などの計算

標準大気圧は101325Pa=0.101325MPaと定められています。したがって両者の関係は次のとおりです。

絶対圧力 = ゲージ圧力 + 0.1013 MPa

現場の圧力計(ブルドン管圧力計)が指示するのは、ほぼすべてゲージ圧力です。一方で体積変化や水分量を計算する場合は絶対圧力を用いる必要があり、この混同は計算誤差の主要な原因となります。

2-2. 【試算②】0.7MPaGへの圧縮による体積変化

温度一定の条件ではボイルの法則が適用できます。

項目
大気圧状態(絶対0.1013MPa)の空気8 m³
圧縮後の圧力0.7MPaG(絶対0.8013MPa)
圧縮後の体積0.1013 × 8 ÷ 0.8013 = 約1.01 m³

大気状態で8m³の空気が、0.7MPaGでは約1m³になります。体積比で約1/8というこの関係が、次章で扱うドレン発生量の計算の基礎になります。

2-3. m³とNm³の相違

カタログに「吐出空気量 10m³/min」と記載されている場合、これは吸込側の大気状態での体積を指すのが一般的です。JIS B 8392-1における参照基準状態は「空気温度20℃、絶対圧力100kPa、相対湿度0%」と規定されています。

これに対し、化学プラントの物質収支では0℃・1atm換算のNm³(ノルマル立方メートル)を用います。同じ「10m³/min」という表記でも基準状態が異なれば別の量になるため、部門間でデータを授受する際は基準状態の確認が必要です。


3. ドレンの発生機構と発生量

3-1. 飽和水蒸気量と露点温度

空気が含むことのできる水蒸気量には上限があり、これを飽和水蒸気量と呼びます。温度が高いほど飽和水蒸気量は大きく、温度が低下すると含みきれなくなります。この限界となる温度が露点温度であり、超過分が液化したものが結露、すなわちドレンです。

温度飽和水蒸気量
40℃約51.1 g/m³
30℃約30.4 g/m³
20℃約17.3 g/m³
10℃約9.4 g/m³
0℃約4.8 g/m³

3-2. 圧縮による水蒸気の濃縮

空気を圧縮しても水蒸気の分子数そのものは変化しません。体積が約1/8になることで、単位体積あたりの水蒸気濃度は約8倍に上昇します。その結果、圧縮直後の空気は飽和状態を大きく超過し、冷却されるにつれて水分が凝縮します。

社内技術資料でも、圧縮空気には同体積の大気より多量の水蒸気が含まれており、配管を流れる過程で冷却・液化してドレンになると説明されています。

3-3. 【試算③】ドレン発生量の計算

夏季の運転条件を想定し、1日あたりのドレン発生量を算出します。

前提条件

項目
コンプレッサー吸込量10 m³/min
吸込空気条件30℃、相対湿度70%
アフタークーラー出口温度40℃
吐出圧力0.7MPaG
稼働時間8 時間/日

計算過程

手順計算式結果
① 吸込側の水分量30.4 g/m³ × 0.70 × 10 m³/min213 g/min
② 圧縮後の体積10 × 0.1013 ÷ 0.80131.26 m³/min
③ 気相に残留できる水分量51.1 g/m³ × 1.26 m³/min(40℃飽和)約64 g/min
④ 凝縮する水分量213 − 64約149 g/min
⑤ 1時間あたり149 g/min × 60約8.9 kg/h
⑥ 1日(8時間)あたり8.9 kg/h × 8約71 kg(約71 L)

吸込量10m³/min規模のコンプレッサーでは、夏季に1日あたり数十リットル規模のドレンが発生します。エアフィルタやドレントラップに多量の水分が溜まる現象は、設備異常ではなく物性上の必然です。

3-4. ドレンによる不具合事象

社内技術資料には、ドレンがタンクや配管を発錆させ、機械の作動不良の原因となること、また潤滑剤や塵埃を含むため大気汚染の一因となる可能性があることが記載されています。実際の設備で生じる事象は次のとおりです。

事象発生箇所・影響
電磁弁・シリンダの作動不良内部に水分が回り、動作が不安定になる
配管内面の発錆錆片が下流に流出し、フィルタ詰まり・ノズル閉塞を生じる
塗装・乾燥工程の品質不良塗装面に水分が付着し、外観不良の原因となる
冬季の凍結屋外配管でドレンが凍結し、エアが供給されなくなる
空気圧機器の寿命低下シリンダ内面の発錆、シール材の劣化

ドレンはコンプレッサーの潤滑油を含む油水混合物(エマルジョン)であることが多く、そのまま排水すると水質規制に抵触する可能性があります。油水分離器(ドレンセパレータ)の設置はこの理由によるものです。


4. 圧力露点と空気清浄度

4-1. 圧力露点と大気圧露点

同一の空気でも、圧力が高いほど水蒸気の分圧が上がるため露点は高くなります。このため圧縮空気の乾燥度は圧力露点(実際の使用圧力下で測定した露点)で表します。JIS B 8392-1でも「圧力露点:実際の圧力下で測定した露点」と定義されています。

4-2. 【試算④】圧力露点10℃の大気圧換算

手順計算式結果
① 10℃の飽和水蒸気圧約1.23 kPa
② 絶対圧0.80MPa中のモル分率1.23 ÷ 801約0.00153
③ 大気圧開放時の水蒸気分圧0.00153 × 101.3 kPa約0.155 kPa
④ ③で飽和する温度約 −16℃

圧力露点10℃(0.7MPaG)の空気は、大気圧に開放すると露点約−16℃に相当します。カタログの数値を比較する際は、圧力露点と大気圧露点のどちらで表記されているかを確認する必要があります。

4-3. エアドライヤの方式と選定

方式原理到達圧力露点ランニングコスト主な用途
冷凍式冷凍機で圧縮空気を冷却し、水分を凝縮分離する一般に+10℃以下低い一般工場エア、空気圧機器の駆動
吸着式(ヒートレス/加熱再生式)吸着剤(シリカゲル、活性アルミナ等)に水分を吸着させる−20〜−40℃以下(−70℃級もあり)高い(パージエアを消費)計装エア、精密機器、医薬・食品、寒冷地の屋外配管

出典:アネスト岩田オリオン機械

選定の目安は、使用環境の最低温度より圧力露点を5〜10℃低くすることです。屋外配管を含む系統では冬季の最低気温、冷凍倉庫を経由する系統では庫内温度が判定基準になります。工場建屋内の温度だけで冷凍式を選定した結果、系統の一部が屋外を経由していて冬季に凍結する事例が報告されています。

吸着式、特にヒートレス式は吸着剤の再生に圧縮空気の10〜15%程度をパージとして消費します。必要以上に低い露点を要求すると、その分がそのまま電力コストに反映されるため、用途ごとに要求仕様を切り分ける必要があります。

4-4. JIS B 8392-1:2012の清浄等級

圧縮空気の品質は、JIS B 8392-1:2012(ISO 8573-1:2010)圧縮空気-第1部:汚染物質及び清浄等級に規定されています。主要な汚染物質は固体粒子、水、オイルの3種類で、表示は次の形式によります。

JIS B 8392-1:2012 [A : B : C]

  A:粒子の清浄等級
  B:湿度及び水分の清浄等級
  C:オイルの清浄等級

湿度及び水分の等級(抜粋)

等級圧力露点
1≦ −70℃
2≦ −40℃
3≦ −20℃
4≦ +3℃
5≦ +7℃
6≦ +10℃

オイルの等級(液状オイル・オイルミスト・オイル蒸気の総濃度)

等級総濃度
1≦ 0.01 mg/m³
2≦ 0.1 mg/m³
3≦ 1 mg/m³
4≦ 5 mg/m³
X> 5 mg/m³

粒子の等級(抜粋)

等級0.1<d≦0.5µm0.5<d≦1.0µm1.0<d≦5.0µm
1≦20,000個/m³≦400個/m³≦10個/m³
2≦400,000個/m³≦6,000個/m³≦100個/m³

出典:JIS B 8392-1:2012(kikakurui.com)

シリンダ駆動用の一般工場エアでは [−:6:−] 相当、計装エアや食品接触部では [2:2:1] というように、用途ごとに要求等級を設定するのが本来の運用です。全系統を一律に高清浄度とすると、ドライヤとフィルタの動力・圧力損失が過大になります。

なお同規格の附属書Aには、呼吸用空気、医療用空気、食品及び飲料に適用する場合は本規格だけでは不十分であり、薬局方やクリーンルーム規格など他の要求も考慮する必要があると記載されています。清浄等級を満たすことと、食品・医療用途の法的要求を満たすことは別の問題として扱う必要があります。


5. エア漏れの定量評価

5-1. 漏れ量の計算モデル

圧縮空気が小口径の穴から大気へ流出する場合、上下流の圧力比が臨界圧力比を超えるためチョーク流れ(音速流れ)となります。このときの質量流量は次式で表されます。

質量流量 ṁ = Cd × A × P₀ × √(γ / (R × T₀)) × (2 /(γ+1))^{(γ+1)/(2(γ−1))}

  Cd:流量係数(円形の穴で0.8程度)  A :穴の断面積 [m²]
  P₀:上流側の絶対圧力 [Pa]          γ :比熱比(空気1.4)
  R :気体定数(空気287 J/(kg·K))   T₀:上流側の絶対温度 [K]

5-2. 【試算⑤】穴径別の年間損失額

上式に空気の物性値(γ=1.4、R=287J/(kg·K)、T₀=293K)、Cd=0.8、上流絶対圧P₀=0.8013MPa(0.7MPaG)を代入した結果が次の表です。

穴径漏れ量必要動力年間電力量年間電気代年間CO₂
φ0.5mm約15 L/min約0.10 kW約580 kWh約1.2万円約0.26 t
φ1.0mm約59 L/min約0.38 kW約2,300 kWh約4.6万円約1.0 t
φ2.0mm約237 L/min約1.54 kW約9,200 kWh約18万円約4.2 t
φ3.0mm約533 L/min約3.47 kW約20,800 kWh約42万円約9.4 t

※試算条件:所要動力6.5kW/(m³/min)、年間運転6,000時間、電気単価20円/kWh、CO₂排出係数0.45kg-CO₂/kWh

φ3.0mmの年間約42万円という計算値は、愛知時計電機が公表している「3mmの穴で年間約40万円のロス」という実測ベースの値とほぼ一致します。計算モデルの妥当性を確認できる結果です。

漏れ箇所は1工場に多数存在するのが通常です。豊安工業の診断事例では、約400m²のエリアで18箇所(年間損失16.3万円)、約500m²で40箇所(年間損失18万円)の漏れが確認されています。同社は100m²あたり3箇所程度は存在するとしています。

5-3. 漏れが発生しやすい部位

診断時に優先的に確認される部位は次のとおりです。

分類部位
可撓部・接続部ポリウレタン製ホース(硬化・ひび割れ)、カプラ(ワンタッチ継手)、ホースバンド付近、ユニオン・ねじ込み継手
手動操作部エアガン(トリガー部、ノズル根元)、ドレンコック(閉め忘れ、シート摩耗)
機器オートドレントラップ(詰まりによる開放固着)、レギュレータ、コンプレッサ周りの配管
機器内部シリンダ、プレス、電磁弁の本体内部漏れ

機器内部の漏れは外観では判別できないため、系統単位の流量測定と組み合わせて範囲を絞り込む手順が有効です。

5-4. 漏れ量の測定方法

方法1:非稼働時の流量測定

コンプレッサー吐出側に流量計が設置されている場合、工場・ラインが完全停止している休日にコンプレッサーのみを起動し、配管内の圧力が安定した後の瞬時流量を読み取ります。この値が系統全体の漏れ量に相当します。

年間損失額 = 漏れ量[m³/min] × 60 × 年間運転時間[h] × 2.2[円/m³]

方法2:圧力減衰法

流量計がない場合は、非稼働時にコンプレッサーを停止し、圧力計の減衰速度から漏れ量を推定します。

漏れ量[m³/min] ≒ 配管系総容積 V[m³] × ΔP[MPa] ÷ 0.1013 ÷ 経過時間[min]

空気消費量2m³/min規模の小規模工場における実測例では、漏れ量0.3m³/min(漏れ率13%)、コスト換算で約1円/分、8時間あたり480円という結果が報告されています(コモネバレー株式会社)。

方法3:超音波リークディテクタによる箇所特定

漏れ部からは40kHz付近の非可聴超音波が発生します。この帯域を検知する機器を用いると、稼働中でも漏れ箇所を特定できます。可聴音として認識できる漏れは全体の一部であり、聴覚による点検だけでは検出漏れが生じます。

5-5. 漏れ量の継続管理

エア漏れ対策で難易度が高いのは、箇所の特定よりも状態の維持です。一斉に補修しても、ホースの劣化やカプラの摩耗により時間の経過とともに再発します。

対策を定着させるには、主配管に流量計を設置し、非稼働時の漏れ量に管理基準値を設定したうえで、超過時に点検を実施する運用が有効です。基準値は稼働時の平均送気量の5%程度が目安とされています。また、系統ごとに流量を把握できれば、調査範囲を限定して診断コストを抑えられます。


6. 省エネルギー対策

6-1. 吐出圧力の低減

吐出圧力を0.1MPa下げると、消費動力は約7〜8%低減します(堺市 省エネ事例J-Net21)。0.8MPaabsから0.1MPa低減した場合の理論上の動力低減は約8%で、これに漏れ量の減少効果を加えると10%程度が見込まれます。

実施にあたっては次の確認が必要です。

  • 末端設備が要求する圧力(設備銘板・取扱説明書)
  • 主管・支管・フィルタにおける圧力損失の実測値
  • 系統内で最も条件の厳しい設備(末端かつ高圧要求)の特定

長期間運転している工場では、設定圧力の変更経緯が記録されていないケースが少なくありません。末端での圧力実測から着手する手順が確実です。

6-2. エアブローの見直し

エアブロー(乾燥・清掃・搬送)は圧縮空気の消費量が大きい工程です。

対策内容
専用ブローノズルへの変更開放配管からノズルに変更し、同等の吹き飛ばし力で消費量を低減する
元圧の低減0.5MPaから0.3MPaへの低減で成立する用途が多い
電磁弁による間欠化ワーク在荷時のみ吹き付け、常時吹き出しを解消する
ブロワへの置換高圧を要しない用途では送風機で代替する

エアブロー工程で80%程度の削減を達成した事例も報告されています(スプレーイングシステムスジャパン)。

6-3. 非稼働時の元弁閉止

夜間・休日にエリアごとの元弁を閉止すると、該当エリアの漏れ損失をゼロにできます。電磁弁と生産管理システムを連動させれば自動化も可能です。設備投資をほとんど伴わずに効果が得られる対策です。

6-4. 流量計による見える化

系統ごとに流量計を設置すると、消費量の多いエリアと漏れの多いエリアを区別できます。設置費用の目安は25Aで1箇所23万円から、50Aで26万円からです(工場ペディア)。年間損失が数十万円規模であれば、1〜2年での回収が見込まれます。

6-5. 配管圧力損失の低減

圧力損失0.01MPaは動力にして約0.7〜0.8%に相当します。口径不足、経路の冗長、フィルタの目詰まりは、いずれも圧力損失として電力コストに反映されます。

項目目安
主管の流速10 m/s 以下
支管の流速15〜20 m/s 程度
エアフィルタ差圧計を設け、差圧上昇で交換
増設を繰り返した系統ループ配管化による圧力損失の均一化を検討

配管の圧力損失計算については、簡単な配管圧力損失の計算法も参考になります。


7. 配管の設計・施工上の留意点

7-1. 下り勾配の確保

エア配管には流れ方向に1/100以上(100進んで1下がる)の下り勾配を設けます。これによりドレンが低所に集まり、所定の位置で回収できます。勾配のない配管では複数箇所にドレン溜まりが形成され、条件によって下流機器へ一括して流入します。

7-2. 支管の取り出し方向

主管からの分岐は、主管の上側から取り出します。ドレンは比重が大きく主管底部を流れるため、下側や側面から分岐すると二次側機器へドレンが直接供給されます。上方へ立ち上げてから反転して下ろす形状はスワンネックと呼ばれます。

特定のラインのみで水分の混入が発生する場合、分岐方向が原因であるケースが多くみられます。

7-3. ドレンポケットとトラップの配置

配管の終端や立ち下がり部には、主管より一段低いドレンポケットを設け、その下端にオートドレントラップを設置します。ポケットを設けずに主管底部へ直接トラップを取り付けると、流れてきたドレンがトラップを通過してしまいます。

オートドレンは詰まりにより開放側で固着すると、そのまま大きな漏れ源になります。定期点検項目に含める必要があります。

7-4. レシーバータンクの機能

コンプレッサー出口に設置されるタンクは、貯蔵のほかに次の機能を担っています。

機能内容
脈動の平滑化往復動式圧縮機の吐出脈動を吸収する
需要変動の吸収一時的な大量消費を吸収し、圧縮機の発停回数を低減する
一次冷却とドレン分離滞留中の温度低下により水分が分離される

圧縮機が頻繁にON/OFFを繰り返す場合、タンク容量の不足またはエア漏れの増加が原因として考えられる状況です。発停回数の増加は電力損失に加え、電動機の寿命低下にもつながります。


8. 安全衛生と法規制

8-1. 圧縮空気による人身災害

圧縮空気は無害な流体として扱われることがありますが、0.7MPa程度の圧力で皮膚に当たった場合、空気が皮下組織に侵入して皮下気腫を生じることがあります。創傷部から血管に侵入した場合は空気塞栓となり、重篤な結果を招く可能性があります。眼に当たれば失明、耳に当たれば鼓膜損傷のおそれがあります。

禁止すべき行為は次のとおりです。

  • 人体に向けてエアを吹き付けること(衣服への吹き付けを含む)
  • 作業服に付着した粉じんをエアガンで除去すること
  • 顔面や手にエアを当てて吐出状態を確認すること

粉じんをエアで吹き飛ばす清掃は、粉じんを浮遊させて作業環境を悪化させます。防爆型の集じん機や湿式清掃への置換が原則となります。

8-2. 第二種圧力容器としての取り扱い

労働安全衛生法施行令第1条第7号により、ゲージ圧力0.2MPa以上の気体を内包する容器で、内容積0.04m³以上、または胴の内径200mm以上かつ長さ1000mm以上のものは第二種圧力容器に該当します(第一種圧力容器を除く)。

該当する場合、事業者には次の義務が生じます。

項目内容
個別検定製造時または輸入時に受検する
定期自主検査1年以内ごとに1回。本体の損傷、ふた締付けボルトの摩耗、管・弁の損傷等を点検
記録の保存検査記録を3年間保存

出典:一般社団法人 日本ボイラ協会ボイラ・クレーン安全協会

小型のエアタンクであっても、内容積や胴寸法によっては法定検査の対象となります。着任時には自工場のエアタンクの台帳と検査記録の所在を確認しておく必要があります。


9. 実務で生じやすい認識のずれ

状況生じやすい対応望ましい対応
末端でエアが不足するコンプレッサーの吐出圧力を上げる末端圧力を実測し、漏れ量と配管圧力損失を切り分ける
カタログの露点値を比較する大気圧露点として解釈する圧力露点か大気圧露点かを確認する
エアフィルタを管理する期間のみで定期交換する差圧を測定し、圧力損失の増加で判断する
支管を増設する施工しやすい側面・下側から分岐する主管上側から分岐し、スワンネック形状とする
系統を増設し続ける系統図を更新しないエア配管もP&IDで管理し、停止範囲を明確にする

いずれも単独では小さな差ですが、系統全体では圧力設定・電力コスト・保全工数に影響します。


10. まとめ

本記事で扱った内容を整理します。

項目数値・基準
工場電力に占めるコンプレッサーの比率約20〜25%
圧縮空気の単価(0.7MPaG、20円/kWh)約2.2 円/m³
0.7MPaGへの圧縮による体積比約1/8(水蒸気濃度は約8倍)
ドレン発生量(10m³/min・30℃70%RH・8h)約71 L/日
圧力露点10℃(0.7MPaG)の大気圧換算約 −16℃
清浄度の表示JIS B 8392-1:2012 [粒子:水分:オイル]
エア漏れ損失(φ1.0mm/φ3.0mm)約4.6万円/年、約42万円/年
吐出圧力0.1MPa低減の効果消費動力 約7〜8%低減
配管の下り勾配1/100 以上
エアタンクの法規制第二種圧力容器に該当する場合、年1回の定期自主検査

確認項目

  • コンプレッサーの吐出圧力設定値と、その設定根拠
  • 末端設備が要求する圧力の実測値
  • 非稼働時の流量(=系統全体の漏れ量)
  • エアフィルタ、ドレントラップの点検周期の設定状況
  • エアタンクの法定検査記録の所在
  • エア配管系統図の更新状況

圧縮空気は消費量が見えにくい一方で、継続的なコストを発生させるユーティリティです。本記事の試算条件を自社の運転時間・電気単価・吐出圧力に置き換えれば、そのまま自工場の損失額として算出できます。まずは非稼働時の流量測定から着手すると、投資を伴わずに現状値を把握できます。


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参考書籍

図解 はじめての空気圧-基礎から回路のしくみまでメカトロニクスの入門書(はじめての空気圧編集委員会/技術評論社) 空気圧技術の基礎、空気の質、エアシリンダ、回路と制御、メンテナンスの5章構成。本記事で扱った範囲を体系的に確認できます。

わかりやすい空気圧の技術(仙田良二/日本工業出版) 空気圧機器の選定と不具合対応に重点を置いた実務書です。

基礎から学ぶ空気圧技術(中西康二/オーム社) 自動化設備や空気圧回路の設計を担当する段階で参照する入門書です。

空気圧システムの省エネルギー(小根山尚武/日本工業出版) エネルギー状態の定量化の考え方と、事業所における省エネルギー活動の統計・事例を収録。本記事後半の内容を掘り下げる際に有用です。

配管の本(入門・機械&保全ブックス)(日本プラントメンテナンス協会) 工場配管全般の基礎を図解で整理した1冊。保全部門の教育テキストとしても用いられています。

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