【プラント設計の基礎】遠心ポンプの基礎知識、原理や特徴をわかりやすく解説します!

みなさんこんにちは、プラントエンジニアのヤンです。

現役プラントエンジニアが教えるプラント設計の基礎知識。

学校では教えてくれないことを中心に、実務に直結する内容を書いていきます。今回は「遠心ポンプ」について語ります。

プラントや工場の中では多くの液体が搬送されており低所から高所へ、時には遠方へ搬送されます。その時に必要なのがポンプです。我々が普段何気に使用する水道の水もポンプで搬送されてきます。

つまりポンプがなければ我々の生活は成り立たないですし、プラントの中でも液体の搬送ができないと言っても過言ではありません。その中でも遠心ポンプは容積式ポンプと比べて取り扱いが簡単なので、非常に多くのところで使われています。

では遠心ポンプの基本的な構造はどうなっているのでしょうか?

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目次

ポンプの必要性

ポンプは液体をある位置から別の位置へ移動させるための重要な機械です。多くのプラントでは液体を低い位置から高い位置へ移動させる必要があります。例えばタンクの底から別のタンクの上部への液体の移動などです。このような場合、位置エネルギーを上回るエネルギー源が必要になります。

ここでポンプの役割が重要になります。ポンプは外部からの力(多くの場合は電力)を使って、液体に圧力エネルギーを与え必要な高さや距離まで液体を移動させます。しかし、ポンプの設計や選定には単に液体を移動させるだけでなく、その過程での様々な要因も考慮する必要があります。

配管内の摩擦は液体の移動における重要な損失要因です。摩擦によるエネルギー損失を正確に計算することができなければ、正確にポンプを選定することはでいません。また、液体の種類やポンプの種類(遠心ポンプ、容積ポンプなど)、およびシステムの全体的な設計(配管径、揚程、流量など)もポンプを選定するときは必要です。

ポンプは位置エネルギーを補う圧力エネルギーを提供することで、液体を効率的かつ効果的に移動させることができます。したがって、ポンプの適切な選定と設計は、プラントの運用効率と生産性の向上に直結する重要な要素となります。

遠心ポンプの構造

遠心ポンプは液体の搬送に運動エネルギー、具体的には遠心力を利用する機械です。これは容積式ポンプが容積変化を利用して液体を移送するのと少し違います。遠心ポンプの基本的な動作原理は、内部のインペラーがモーターによって駆動され、この回転によって液体に運動エネルギーが伝達されます。結果、液体がポンプの吐出口から排出されるというものです。

遠心ポンプに関しての構造
Wikipediaより引用

この構造と原理を理解するために、底に小さな穴があるバケツのモデルを考えてみましょう。このバケツを水で満たし持ち手を持って回転させると、バケツの回転によって発生する遠心力が水を外側に押し出し、結果として穴から水が強力な流れとなって噴出します。バケツを早く回転させるほど流れは強くなります。

これらをもう少し専門的に解説してみます。

構造と機能

遠心ポンプの主要な構成要素は、インペラー、ケーシング、軸、軸受け、シール等です。インペラーはポンプの心臓部とも言え、複数の羽根が液体を遠心方向に加速させます。インペラーは一般に閉じ型、半開き型、開き型の三種類に大別され、液体の種類や用途に応じて選択されます。

運動エネルギーの変換

遠心ポンプではモーターによる回転運動がインペラーに伝達され、インペラーの羽根が液体を回転させることで遠心力を生じさせます。この遠心力によって液体はインペラーの外周に向かって加速し、ポンプの圧力ヘッド(head)を生み出します。インペラーを出た液体は遠心ポンプのケーシング(通常は渦巻形状)を通過し、速度エネルギーが圧力エネルギーに変換されます。

効率と適用

遠心ポンプはそのシンプルな構造と堅牢性から多くの工業用途に広く利用されています。普通の水から化学薬品、温水、油など、さまざまな液体の移送に適しています。しかし、粘性が高い液体や固形物を含む液体の搬送には適していません。また、遠心ポンプの効率は運転条件やポンプ設計によって大きく変わります。最適な性能を発揮させるためにはポンプの選定や運用において、液体の特性や必要な流量、圧力ヘッドなどを考慮する必要があります。

このように遠心ポンプの原理はシンプルながら、その設計と運用には深い知識が必要です。各種の運用条件に合わせて適切に遠心ポンプを選定、設計、運用することが重要です。

遠心ポンプのメリットとデメリット

遠心ポンプは多くのプラントや工場で使用されているポンプですが、容積式ポンプと比べるとデメリットが発生する場合があります。遠心ポンプのメリットとデメリットを正確に理解して、適正なポンプを選定できるようにしましょう。

遠心ポンプのメリット
  • 構造上圧力が一定以上上昇しない。
  • 出口側のバルブが閉じても流量が0になるので万が一の場合でも安全。
  • 流量調整がコントロール弁、インバーターの両方で行える。
  • 幅広い液体に対応できる。特に低粘度の液体を扱う際に効率的です。
遠心ポンプのデメリット
  • (容積式ポンプと比べると)吐出圧力が小さい。高圧が要求される用途には適していない。
  • 高粘度流体には対応できない。
  • インバーターの使用方法を誤ると送液不能になる。
  • NPSHを考慮しないと送液不能になる。

遠心ポンプは非常に幅広く使われているので「万能なポンプ」と勘違いしている人も多いですが、高粘度流体には対応できないですし吐出圧力も容積式と比べると低いです。これらをよく理解して最適なポンプを選定しましょう。

遠心ポンプの選定方法

遠心ポンプを選定する際に重要なのは以下の3点となります。これらは相互に関連しており、一つでも適切でない場合、システムは効率的に機能しません。

  • 流量
  • 全揚程
  • 吸い込み全揚程

です。これら3つのうちどれか一つでもかければ送液できなくなりますので、正確に選定することが必要です。

流量

その名の通り必要な量を流すことのできるポンプが必要です。これは基本的に設計条件により決まりますので、ポンプの選定がどうこうよりも設計に起因するトラブルの方が多いです。

全揚程

ポンプは圧力を液体に与えて低所から高所へと搬送しますが、その時に必要な圧力は単純に高さではありません。配管内の摩擦損失やバルブ、継手による圧力損失が含まれます。

これらを加味して考えたポンプの必要な圧力が全揚程となります。これが足りないと圧力不足により送液ができない、もしくは送液はできるけど流量が極端に低いなどのトラブルの元になります。

吸い込み全揚程

ポンプで地下にあるピットなどから吸い上げるときは、ポンプの吸い込み能力も重要となります。吸い上げる際はポンプ入口が下がることにより、ピットなどの液体の表面に生じる大気圧も利用して、液体を吸い込みます。

このとき、液体の飽和蒸気圧よりポンプの吸い込み側圧力が低くなると、キャビテーションというトラブルの元になるので注意が必要です。

一般的にはNPSHと呼ばれることが多いですが、これらもしっかりと計算して求めておくことでトラブルを回避できます。

適切な遠心ポンプの選定は、これらの要素に基づいて行われる必要があります。流量、全揚程、吸い込み全揚程を正確に計算し、システムの要件に合わせて選定することで効率的かつ安全に液体を移送することができます。

使用上の注意点

実際に遠心ポンプを使用する場合の注意点です。容積式ポンプと比べると扱いやすいポンプですが注意点は色々必要です。

遠心ポンプの使用上の注意点
  • 入り口配管径はなるべく太くして流速は0.5〜1m/sに抑える。流速が速すぎるとキャビテーションが発生する恐れがあります。
  • 出口の流速は1〜2m/sになるように設計する。
  • 出口には必ず逆止弁を設ける。逆止弁のあとに手動弁を設ければ逆止弁の交換が行いやすくなる。
  • 流量調整を行いたい場合はバルブで行うか、インバーターで行うのが良いかよく検討する。バルブであれば簡単であるがインバーターよりも省エネ効果が小さい。インバーターは省エネ効果が大きいが吐出圧が下がる。
  • キャビテーションを避けるためには、NPSHの要件を満たしていることを確認する。
  • 吸い込み揚程はできる限り小さくする。キャビテーションのリスクが減少する。
  • 吸い込み液面圧力をあるべく上げる。
  • 常時運転しているが吐出側を閉じていることが多い場合にはミニマムフローラインを設ける。

遠心ポンプのトラブルとその原因

遠心ポンプに関するトラブルとその対処法をまとめています。

キャビテーション

ポンプの運転時に発生する問題としてキャビテーションがあります。これは液体中の圧力がその時の温度の蒸気圧よりも低い部分が生じて、液体の蒸発や溶融しているガスにより小さな気泡を多数発生する減少です。

この気泡は振動や騒音の原因になるだけでなく、気泡が羽根車やケーシングに付着して破壊するとその際の衝撃波によりエロージョンが生じます。

なお、基本的にキャビテーションは圧力が低くなる所、ポンプの吸い込み側に発生しやすいので

キャビテーションを発生させないための対策
  • ポンプの入り口配管径を太くして流速を0.5〜1m/sに抑える。
  • なるべく液温が低くなるようにする。
  • 有効吸い込み揚程(NPSH:Net Positive Suction Head)に注意する。
  • ポンプの吸い込み位置をできるだけ下げて吸い込み揚程を小さくする。
  • ポンプの回転速度を下げる。
  • 吸い込みの液面を上げる。
  • 吸い込み液面圧力を上げる
  • 液体中の混入ガスを少なくする。

これらを注意することでキャビテーションを防ぎましょう。

サージング

サージングはキャビテーションと似ている現象です。基本的に気体の圧縮に使用するターボ型ブロワに発生する現象ですが遠心ポンプでも発生する場合があります。

ポンプ出口側で圧力が急激に変化すると液体の搬送が不安定となり、振動が発生するので注意が必要です。

サージングの防止対策
  • 吐出配管に空気溜まりなどを生じさせないようにする。
  • 配管途中に貯槽などを設けない。
  • エア弁を設けて試運転段階でエア抜きをしっかりとする。

以上の対策をすることでサージングを防ぐことができます。

振動・異音の発生

キャビテーション、サージングなどが発生した場合に起こるので、設計段階で流速やNPSHをよく検討することが必要。空気を吸い込んでいないかも確認すること。

圧力計の指示が異常

何らかの原因で回転数が低下したり漏洩があると、圧力計の数値が下がる。吐出配管に物が詰まると圧力計の数値は上がる。

キャビテーションやサージングが発生すると圧力計の指示が不安定になる。

モーターの過負荷

遠心ポンプは計画よりも高い吐出量で運転すると軸動力が高くなるのでモーターの過負荷につながる。同様に液体の密度や粘度が高くなると同様に過負荷につながる。

また、インペラになにか詰まって抵抗になると同様に過負荷につながるので、異物が入る恐れがあるときはストレーナーを設置する(ただし圧損に注意!)。

吐出量の減少

使用開始時に正常な吐出量だったのに運転後に下がった場合は羽根車の摩耗などが考えられるので点検をする必要がある。

また、配管内に何か異物が詰まったりスケールで閉塞すると吐出量が減少する。

発熱

締切運転を長くすると液体がケーシングの中でかき回されて発熱する。発熱するとキャビテーションが発生して振動や騒音の原因、羽根車の損傷などが起こる。

プロセス設計上でどうしても締切運転を長くする場合は、ミニマムフローラインを設けて吐出側の最低流量を確保して温度上昇を抑える。

まとめ

遠心ポンプはいろいろな産業で使われている汎用性の高いポンプです。

汎用性が高い反面、使用方法に気をつけ合いと大きなトラブルに繋がる恐れがあるので、配管設計やプロセス設計で注意が必要です。

別の記事ではもう少し詳しく各ポンプの違いや、運転方法などを解説したいと思っています。

ポンプの選定とトラブル対策-現場で起きた故障事例と対処法-

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