送風機の風量不足を切り分ける|風量・静圧・電流の見方と局排の制御風速

集じん機の吸込みが弱くなった、乾燥炉の温度が上がらない、局所排気装置の制御風速が基準を下回った。このような異常が発生すると、ダンパを開く、または送風機の回転数を上げる処置が取られがちです。

しかし、送風機の実際の風量は、送風機の性能曲線とダクト系統の抵抗曲線が交わる点で決まります。フィルタやダクトの閉塞、回転方向の誤り、ベルトのスリップ、ダクト漏れ、吸込口付近の偏流などが原因の場合、ダンパを開けても十分な改善は得られません。

また、回転数を上げると、理想的な相似条件では風量は回転数に比例しますが、圧力は回転数の2乗、軸動力は3乗で増加します。原因を特定しないまま増速すると、電動機の過負荷や送風機の損傷につながります。

本記事では、風量、圧力、電流、回転数の測定結果から、風量不足の原因を切り分ける手順を整理します。後半では、有機溶剤用局所排気装置に適用される制御風速と測定位置についても説明します。対象は設備保全および生産技術の担当者で、送風機の仕様書を読んだことはあるが運転点の読み方までは追っていない段階を想定しています。

目次

1. 最初に測る4項目

1-1 風量・圧力・電流・回転数をそろえて測る

風量不足の報告を受けたとき、追加の工事をせずに測れる数値は次の4つです。

測る項目測定場所使う計器
末端の風速または風量フード開口面、ダクトの測定孔熱線風速計、ピトー管
吸込側と吐出側の圧力送風機前後の測定孔マノメータ、微差圧計
電流電動機の主回路クランプメータ、盤の電流計
回転数羽根車軸またはプーリ回転計、ストロボ

回転数を後回しにすると、ベルトのスリップやインバータの設定変更といった原因を見落とします。測定の手間が小さい項目でもあるため、最初の4点に含めます。

この4つは、同じ運転状態で測ります。別の日に測った数値を並べても、抵抗が増えたのか送風機の能力が落ちたのかは区別できません。

1-2 「圧力」が何を指しているのかを区別する

圧力の測定で混乱が起きやすいのは、次の値がいずれも「静圧」と呼ばれることがある点です。

  • 吸込ダクト内の静圧
  • 吐出ダクト内の静圧
  • 吸込と吐出の静圧差
  • 送風機静圧
  • フィルタや集じん機の前後差圧

これらは別の数値です。吸込側と吐出側の静圧をそれぞれ測定したとして、2点の静圧差がそのまま送風機全圧や送風機静圧になるとは限りません。ダクト断面積が異なる場合は動圧も変わるため、送風機性能と比較するときは、送風機全圧、送風機静圧、ダクト静圧を区別します。フィルタや集じん機の閉塞を確認するときは、装置前後の差圧を別に測定します。

JIS B 8330では、送風機全圧 Pt は吸込側と吐出側の全圧の差、送風機静圧 Ps は送風機全圧から吐出口の動圧 Pd2 を減じた値と定義されています。

Pt = (Ps2 + Pd2)-(Ps1 + Pd1) Ps = Pt - Pd2

動圧は風速と空気密度で決まります。

Pd = ρ × V² ÷ 2

標準空気の密度1.20kg/m³で計算すると、ダクト内風速10m/sの動圧は60Pa、15m/sで135Pa、20m/sで240Paになります。静圧600Pa級の送風機で風速20m/sのダクトを使うと、動圧が静圧の4割に相当する大きさになります。静圧だけを見て性能と比較すると、この分を見落とします。

1-3 設計値と比べるときにそろえる条件

測定値を設計値や過去の記録と比較する場合は、次の条件をそろえます。

  • 回転数(インバータの運転周波数)
  • ダンパの開度
  • 使用しているフードや分岐の数
  • フィルタの状態(清掃前か後か)
  • 吸込空気の温度

このうち1つでも違うと、運転点が動きます。複数のフードを1台の送風機でまとめている系統では、使用フード数の違いだけで末端風量が変わります。

1-4 設計図書がない場合の基準値

設計図書がない場合は、送風機の銘板、機種別性能曲線、電動機銘板、過去の点検記録を集めます。送風機銘板の風量・圧力は定格点や代表仕様を示すもので、実際の運転点と一致するとは限りません。電動機の定格電流も、正常時の基準電流ではなく、超えてはならない側の確認値です。

可能であれば、設備が正常だった時期の風量、圧力、電流、回転数を基準値として使用します。

なお、JIS B 8330は、圧力比が約1.3未満の遠心送風機・軸流送風機・斜流送風機について、工場での試験および検査の方法を定めた規格です。現場で測った1点の静圧値を、そのまま同規格による性能値とみなすことはできません。規格の値は、測定方法の考え方と計器の仕様を確認するために使います。

2. 原因の方向を判定する

2-1 遠心送風機で見られる代表的な傾向

末端風量が低下しているとき、圧力と電流がどちらに動いているかで、想定される原因の方向が絞れます。

末端風量ファン前後の圧力電流想定される原因
低下上昇低下フィルタの目詰まり、ダクト内のたい積、ダンパの閉そく、吸込口の目詰まり
低下低下低下回転数の低下(ベルトのスリップ・周波数設定)、回転方向の誤り、羽根車の摩耗、空気密度の低下
低下ほぼ変わらず上昇ダクトの漏れ、未使用分岐の開放、ダンパの脱落(送風機を通る風量は増え、末端に届かない)
低下振れる振れるサージング、吸込旋回失速(抵抗過大または吸込口の閉そく)

この表は、同じ回転数・同じ空気密度で運転している遠心送風機を想定した切り分けの目安です。電流と風量の関係は羽根車形式によって異なるため、最終判断はメーカーの風量・圧力・軸動力曲線と照合してください。特に多翼送風機や軸流送風機では、風量が減れば電流も下がるとは限りません。

2-2 組み合わせごとの読み方

回転数と空気密度が変わっておらず、メーカー性能曲線でも小風量側ほど軸動力が下がる形式の場合、圧力上昇と電流低下の組み合わせは、系統抵抗増加の可能性を示します。風量が減ると送風機が空気に与える動力が減るため、抵抗が増えているのに電流は下がる方向に動きます。

圧力が下がって電流も下がっている場合は、送風機側の能力低下、または空気密度の低下が考えられます。回転数の実測が必要な領域です。

圧力が変わらないまま電流が上がっている場合は、送風機を通る風量そのものが増えている可能性があります。末端に届いていないのであれば、途中で漏れているか、別の経路に流れています。

風量と電流がともに振れる場合は、不安定運転の領域です。ダクト抵抗が高い状態ではサージングが発生し、吸込口・吐出口が閉そくに近い状態での運転は吸込旋回失速の原因になります(「空調用送風機」トラブルの原因と対策(日本建築設備診断機構))。

3. 風量は特性曲線と系統抵抗曲線の交点で決まる

3-1 系統抵抗は風量の2乗に比例する

ダクト・エルボ・フィルタ・フードの圧力損失は、いずれも次の形で表されます。

ΔP = f × ρ × V² ÷ 2

風速は風量に比例するため、系統全体の抵抗は風量の2乗に比例します。同じダクトで風量を2倍にすると、必要な圧力は約4倍になります(送風機の基礎|ソフトエンジニアリング)。

これをグラフに描いたものが系統抵抗曲線で、送風機の風量-圧力特性曲線との交点が実際の運転点になります。風量不足は、この交点が左側に移動した状態です。交点は、系統抵抗曲線が立ち上がったか、特性曲線が下に下がったかのどちらかで移動します。第2章の切り分け表は、この2つを圧力の動く方向で区別しています。

3-2 【試算①】仮想モデルで系統抵抗の増加が風量に効く度合いを見る

以下は実機の測定値ではなく、計算の感覚をつかむために設定した仮想モデルです。設計点の風量60m³/min、静圧600Pa、締切静圧900Paの送風機を想定し、特性曲線を Ps=900-0.0833Q²、系統抵抗曲線を Ps=0.1667Q² と近似します。この設定では、交点が設計点の60m³/minで一致します。

系統抵抗の倍率風量設計風量比交点の圧力
1.0倍60.0 m³/min100%600 Pa
1.2倍56.4 m³/min93.9%635 Pa
1.5倍52.0 m³/min86.6%675 Pa
2.0倍46.5 m³/min77.5%720 Pa
3.0倍39.3 m³/min65.5%771 Pa

この仮想モデルでは、系統抵抗係数を2倍にしても風量は22.5%の低下にとどまります。ただし、この数値は設定した送風機特性曲線に固有の結果です。実機では羽根車形式や運転領域によって低下率が異なるため、メーカー性能曲線上で運転点を求めてください。

それでも、抵抗の増加が風量には鈍く現れるという傾向は共通しています。フィルタの差圧が倍になった設備で「風量はまだ8割近く出ているから問題ない」と判断されることがあるのは、この効き方のためです。

3-3 【試算②】風量の低下幅から抵抗の増加を見積もる

同じ仮想モデルで、風量比から系統抵抗の倍率を逆算すると次のようになります。

風量(設計比)系統抵抗の倍率交点の圧力
95%1.16倍629 Pa
90%1.35倍657 Pa
85%1.58倍683 Pa
80%1.84倍708 Pa
70%2.56倍753 Pa

この仮想モデルでは、風量が設計値の90%になると抵抗係数は設計時の約1.35倍、80%で約1.84倍になります。この倍率を他の送風機へそのまま適用することはできません。

ただし、同じ設備で過去の正常時の圧力と風量を記録していれば、同じ手順で自分の設備の関係を描けます。圧力の測定孔は多くの送風機に設けられているため、風量より測りやすい数値です。清掃や部品交換の優先順位を決めるときに、記録からの逆算が判断材料になります。

4. ダンパを開けても風量が増えない理由

4-1 ダンパ開度と風量は比例しない

ダンパの開度と風量は比例しません。開度50%でも風量が全開時の50%になるわけではなく、ダンパの種類によっても関係は変わります(テラル よくあるご質問)。現場では、開度を半分にしたのに風量がほとんど変わらない、という形で現れます。

理由は3-1の2乗の関係にあります。ダンパを絞って系統抵抗が増えると運転点が左に移動しますが、風量が減ると他の部分の抵抗も2乗で減るため、系統全体の抵抗はダンパで足した分ほど増えません。

4-2 【試算③】ダンパが設計風量時に追加する圧力損失と、仮想モデル上の運転風量

試算①と同じ仮想モデルで計算します。下表の「ダンパ圧損」は、設計風量60m³/minで流した場合に発生すると仮定した圧力損失です。実際には、ダンパを絞って風量が低下すると、ダンパ自身の圧力損失も流量の2乗で変化します。

設計風量時のダンパ圧損圧損の値運転風量設計風量比
設計点静圧の5%30 Pa59.0 m³/min98.4%
設計点静圧の10%60 Pa58.1 m³/min96.8%
設計点静圧の20%120 Pa56.4 m³/min93.9%
設計点静圧の30%180 Pa54.8 m³/min91.3%
設計点静圧の50%300 Pa52.0 m³/min86.6%

この仮想モデルでは、送風機静圧の半分に相当する300Paをダンパで消費させても、風量の低下は13.4%にとどまります。裏から読むと、全開にして取り戻せる風量も同じ程度の幅です。ダンパで消費していた圧力が送風機静圧の1割なら、全開にして増える風量は3%程度になります。

既に全開に近いダンパをさらに開けても、回復できる風量は限定的です。大幅な風量不足では、ダンパ開度だけでなく、フィルタ、ダクト、回転数、回転方向、漏れ、吸込状態を確認します。一方、ダンパが大きく絞られている設備では、開放によって風量が大きく増えるケースもあります。ダンパの現在位置を実際の羽根で確認することが前提になります。

4-3 吸込ダンパ制御の動力(一事例)

環境省資料に掲載された事例では、風量を3,890m³/hから2,880m³/h(74%)まで低下させたとき、吸込ダンパ制御の軸動力は77%でした(環境省 SHIFT 対策概要シート 240241)。一方、系統抵抗曲線が原点を通り、相似則が適用できる理想的な回転数制御では、動力比は0.74³、約41%になります。

これは一つの比較例であり、実際の削減量は送風機形式、効率、固定圧力損失、インバータおよび電動機の効率によって変わります。トラブル対応の場面では、ダンパを絞っても電流がほとんど下がらない設備があるという事実のほうが実用的です。電流が下がらないことだけを根拠にダンパの故障と判断すると、点検の方向を誤ります。

5. 現場での確認順序

測定の手間が少なく、かつ見落としたときの影響が大きい項目を先に置いています。

5-1 回転方向

三相電動機の結線を触った後、または機器を入れ替えた後の風量不足では、回転方向を最初に確認します。遠心送風機は逆回転でも送風を続ける場合があるため、風量不足としてしか現れません。詳細は第6章で扱います。

5-2 回転数

回転数を実測し、銘板値および過去の記録と比較します。Vベルト駆動では、ベルトの張力低下によるスリップ、プーリの摩耗、ベルトの伸びが回転数低下の原因になります。インバータ駆動では、運転周波数の設定値そのものを確認します。

5-3 フィルタ・ダクト・ダンパ

フィルタの前後差圧、ダンパの開度と実際の羽根の位置、ダクト内のたい積、吸込口の網の目詰まりを確認します。送風機前後の圧力が記録より高ければ、この領域の可能性が高くなります。

5-4 漏れと分岐

ダクトの接合部、点検口、たわみ継手の破れ、使用していない分岐のダンパ位置を確認します。末端風量だけが落ちていて電流が上がっている場合は、この領域を先に見ます。

5-5 吸込・吐出まわりの形状

圧力も電流も記録に近いのに風量が出ない場合は、送風機の直前直後の形状を確認します。この領域の不具合は、系統抵抗としては大きく現れないまま送風機の性能そのものを落とします。詳細は第8章で扱います。

5-6 羽根車の汚れ・摩耗

羽根車への付着は、流路の縮小と不釣合いの両方を生じます。摩耗は羽根の形状を変えるため、性能曲線そのものが下がります。振動値の推移と合わせて確認します。

5-7 温度・密度

吸込空気の温度が記録と違う設備では、密度の換算を行います。体積風量が設計どおりでも、質量流量が不足して能力が出ない場合があります。詳細は第9章で扱います。

6. 逆回転しても送風するため見落としやすい

6-1 風向だけでは回転方向を判定できない

遠心送風機は逆回転しても、ケーシングの吸込口から吐出口へ空気が流れる場合があるため、回転方向の誤りを風向だけでは判定できません。逆回転時の風量、圧力、軸動力は羽根車形式によって変わりますが、一般に所定の性能は得られません(テラル よくあるご質問)。

空調用送風機のトラブル要因をまとめた資料でも、風量不足の原因の筆頭に三相電動機の誤結線による回転方向の誤りが挙げられています(日本建築設備診断機構)。

実際の事例では、更新した送風機が逆回転していたために吸い込みが不足し、異音・異常振動、軸封部からの粉じん漏れ、軸受箱の過熱が同時に発生しています。この事例では能力が半減したと報告されています(送風機の逆回転で実際に発生した不具合)。低下の度合いは機種と系統によって変わるため、この半減という値を一般的な判定値として使うことはできません。

6-2 現場での確認方法

羽根車が見えない構造の送風機では、次の方法で確認できます。

  • ケーシングまたは架台に表示された回転方向の矢印と、停止直前の惰性回転の向きを比べる
  • Vベルト駆動の場合、減速中のベルトの進行方向を見る
  • 電動機の外扇ファンの回転方向を確認する
  • 短時間だけ通電して回転方向を確認する(取扱説明書に記載された手順)

逆回転であった場合の処置は、三相電源のうち2本を入れ替えることです。送風機の取扱説明書でも、瞬時運転で回転方向を確認し、逆であれば電源を切って3本のうち2本を入れ替える手順が指示されています(昭和電機 遠心式Vベルト駆動送風機 取扱説明書)。

6-3 電流値から回転方向を推測しない

逆回転時は、正回転時とは異なる特性曲線で運転するため、風量比から圧力や電流を相似則で求めることはできません。一般に正規性能より風量・圧力が低下しますが、電流がどの程度変化するかは送風機の形式によって異なります。

回転方向は、電流値から推測せず、ケーシングの矢印と軸の実回転方向を直接確認します。異音・振動・軸受過熱を伴う風量不足では、この確認を優先します。

7. 回転数を上げる前に確認すること

7-1 ベルト張力はたわみ量だけでは判定できない

ベルト張力の判定では、プーリ間距離に対するたわみ量だけでなく、所定のたわみを生じさせるために必要な押付け力を測定します。たわみ量だけを測っても、加える力の条件が決まっていなければ張力は分かりません。具体的な押付け力とたわみ量は、ベルトの種類、断面、プーリ径、伝達動力によって異なるため、送風機およびベルトメーカーの基準を使用してください。

局所排気装置の定期自主検査指針では、ファンと電動機のベルトについて、たわみ量Xが 0.01ℓ<X<0.02ℓ の範囲内であることが判定基準として示されています(ℓはプーリ間の長さ)(局所排気装置の定期自主検査指針)。これは同指針の対象となる設備の検査基準であり、一般設備のすべてのVベルトに共通する基準として使うものではありません。

ベルトに関する一般的な注意として、新品のベルトは初期伸びがあるため運転20〜30時間後に張り直すこと、プーリの平行度を確保すること、1か月以上停止させる場合はベルトを外すことが取扱説明書に示されています(昭和電機 取扱説明書)。

7-2 【試算④】相似則による風量・圧力・軸動力の関係

相似則では、回転数nに対して風量はn、圧力はn²、軸動力はn³に比例します(オリオン機械 よくあるご質問)。

回転数比風量比圧力比軸動力比
0.900.9000.8100.729
0.950.9500.9020.857
0.980.9800.9600.941
1.051.0501.1031.158
1.121.1201.2541.405

この関係は、同じ送風機、同じ気体、同じ羽根角度、相似な流れの状態を前提とする近似です。効率が大きく変化する低速域、サージング領域、インバータによる極端な低周波運転では、単純な比例関係から外れることがあります。メーカーの資料では、回転数の変化が±20%程度までの範囲で使うことが示されています。

なお、JIS B 8330に規定された「試験回転数の規定回転数からの偏差は±20%以内」というのは試験条件であり、実機で相似則が±20%以内なら正確になる、という意味ではありません。両者は別の話として扱います。

ベルトのスリップが2%発生している場合、この近似では風量は2%、圧力は4%の低下になります。風量の2%低下は現場で気づきにくい幅ですが、スリップはベルトの発熱と摩耗を伴うため、放置すると低下幅は広がります。

7-3 プーリ径や周波数の変更はメーカーの承認を得る

プーリ径の変更やインバータ周波数の引上げは、送風機メーカーの承認なしに行わないでください。回転数を上げると、軸動力だけでなく、羽根車応力、振動、軸受負荷、騒音も増加します。銘板回転数を超える増速は行わず、必要風量、必要圧力、電動機容量、機械強度を再確認します。

軸動力の増え方は見積もっておく価値があります。回転数を1.12倍にすると風量は1.12倍ですが、軸動力は1.405倍です。軸動力6.5kWで7.5kWの電動機を使っていた設備では9.13kWとなり、電動機の定格を超えます。この場合は電動機の容量も見直す必要があります。

昭和電機の送風機取扱説明書は、プーリまたはインバータによる変更を含め、銘板記載の定格回転数を超える増速運転を禁止しています。インバータ駆動では上限周波数を銘板周波数以下とし、下限は25〜30Hz、加減速時間は30〜60秒以上、V/fパターンは二乗低減トルク特性とすることが同説明書で指示されています。羽根車の周速が25m/sを超える送風機については、回転試験の前に安全性の確認が必要とされています(JIS B 8330)。

8. 吸込・吐出まわりの気流

8-1 送風機の直前直後の形状が性能を落とす

送風機は、吸込口と吐出口に一定の気流の状態を前提として性能が決められています。この前提が崩れると、系統抵抗の計算値が合っていても風量が出ません。空調用送風機のトラブル資料では、風量不足の原因として次の項目が挙げられています(日本建築設備診断機構)。

  • ダクトの隙間からの漏れ
  • 吸込口の目詰まり、吸込側フィルタの取付け不良
  • たわみ継手のたるみによる流路の縮小
  • 送風機直前直後の急縮小・急拡大
  • 吸込口直前の障害物
  • T字ダクトの行き止まりによる偏流

たわみ継手のたるみは見落とされやすい項目です。外観では異常がなくても、内側に垂れ込んで断面積を減らしていることがあります。適正な長さのたわみ継手を使用し、ダクトの荷重はサポートで受ける必要があります。

8-2 吐出側の拡大角と分岐の角度

吐出ダクトを拡大する場合、拡大部の角度は15°以下とすることが示されています(ファン回りのダクト設計・施工(日本建設業連合会))。急拡大では吐出気流が広がりきらず、動圧が静圧に回復しないまま損失になります。同資料では、送風機に近いダクトの極端な変形が、旋回やダクト抵抗の過大を招いて性能不足やサージングの原因になることも指摘されています。

局所排気装置の設計では、主ダクトと枝ダクトの合流角度を45°を超えないようにするとされています。また、外付け式フードにフランジを設けると気流の整流作用が増し、少ない排風量で同じ効果が得られます(労働衛生コンサルタント試験 公表問題解説)。

複数のフードを1台の送風機でまとめている系統では、使っていないフードのダンパが開いたままになっていると、そこから空気が入って必要なフードの風量が落ちます。第2章の切り分け表で「圧力は変わらず電流が上がる」に該当するケースです。

9. 空気密度が風量と動力に与える影響

9-1 条件がそろえば体積風量は変わらない

同じ送風機を同じ回転数で運転し、ダクト系の損失も速度圧に支配される場合、空気密度が変わっても体積風量は理論上ほぼ変わらず、圧力と軸動力が密度に比例します。一方、質量流量は密度に比例して変化します。

「高温になると風量が落ちる」という説明がされることがありますが、条件がそろっている範囲で落ちるのは質量流量です。風量計の指示が正常なのに乾燥や冷却の能力が出ないトラブルは、この違いが原因になっている場合があります。

9-2 【試算⑤】温度による密度と質量流量

標準空気(20℃、101.3kPa、相対湿度65%)の密度1.20kg/m³を基準に、温度ごとの密度と質量流量を計算します。体積風量は60m³/minで一定とします。

下表は、絶対圧力を101.3kPa、乾燥空気を理想気体と仮定した概算です。排ガスの組成、湿度、吸込負圧が変わる場合は、実際の分子量と絶対圧力を使って補正してください。

吸込温度空気密度密度比質量流量
20℃1.200 kg/m³1.00072.0 kg/min
80℃0.996 kg/m³0.83059.8 kg/min
150℃0.831 kg/m³0.69349.9 kg/min
200℃0.744 kg/m³0.62044.6 kg/min
300℃0.614 kg/m³0.51136.8 kg/min

200℃では質量流量が62%になります。乾燥炉や排ガス系統で「風量は出ているのに処理能力が足りない」という状態は、この62%を見ていないことで起こります。排ガス処理や燃焼空気の計算では、体積ではなく質量または標準状態換算の量で確認する必要があります。

9-3 【試算⑥】常温での試運転は軸動力が増える

密度比の関係は、試運転時に逆方向で問題になります。200℃の条件で選定した送風機を常温の20℃で運転すると、設計温度時より空気密度が高いため、軸動力は 1.200÷0.744=1.614倍になります。軸動力7.0kWで選定していた設備では、常温で11.3kWに達します。

起動時のダンパ位置は送風機形式によって異なるため、必ず機種別の取扱説明書に従い、電流を監視しながら運転してください。昭和電機の遠心送風機の取扱説明書では、始動時にダンパを全閉にし、起動後に徐々に所定の位置まで開けながら電流値を監視する手順が指示されています。一方、締切側で軸動力が増える形式もあり、設備によっては全閉運転がサージングや過熱の原因になります。全閉起動をすべての送風機に適用してはいけません。

原因が分からないままサーマルの設定値を上げる処置をとると、電動機の焼損につながります。常温試運転で電流が定格を超える場合は、密度の影響を計算で確認したうえで、運転条件と機種別手順を見直します。

10. 局所排気装置の判定(有機則が適用される設備)

10-1 制御風速の法定値

有機溶剤中毒予防規則の対象となる局所排気装置では、第16条に次の制御風速が定められています(有機溶剤中毒予防規則)。

フードの型式制御風速
囲い式フード0.4 m/s
外付け式フード 側方吸引型0.5 m/s
外付け式フード 下方吸引型0.5 m/s
外付け式フード 上方吸引型1.0 m/s

囲い式はフード開口面における最小風速、外付け式は吸引しようとする範囲内でフード開口面から最も離れた作業位置の風速として規定されています。この測定位置の違いが、後述の必要排風量の計算を分けます。

有機則第16条が適用される設備では、対象となる測定位置で規定の制御風速を満たす能力が必要です。特定化学物質障害予防規則、粉じん障害防止規則などが適用される設備は、別の基準を確認してください。

10-2 測定方法は囲い式と外付け式で異なる

囲い式フードでは、開口面を等面積に分割し、各部分の中心で気流を確認します。定期自主検査指針では、一辺0.5m以下となるよう16以上、開口面が著しく小さい場合は2以上に分割する方法が示されています。開口面の中央1点だけで測ると、周辺部の風速低下を見落とします。

外付け式フードでは、開口面ではなく、フードから最も離れた作業位置など、実際に有害物を捕捉すべき位置で制御風速を確認します。

ダクト側で風量を測る場合は、ファン入口側または出口側の測定孔からピトー管を挿入します。JIS B 8330では、ピトー管の先端部直径は5〜20mm、静圧管は5〜10mm、静圧孔は1mmと規定されています。500Pa以下の圧力測定には傾斜マノメータまたは微差圧計を使用します。

10-3 【試算⑦】囲い式フードの概略排風量

囲い式フードでは、開口面積と必要な開口面風速から概略の排風量を計算できます。

開口寸法開口面積必要風速概略排風量
0.5m×0.5m0.25 m²0.4 m/s0.10 m³/s(6.0 m³/min)
0.6m×0.5m0.30 m²0.4 m/s0.12 m³/s(7.2 m³/min)
0.8m×0.6m0.48 m²0.4 m/s0.19 m³/s(11.5 m³/min)

一方、外付け式フードの制御風速は発散源側の作業位置で評価するため、開口面積との単純な積では必要排風量を求められません。フード形状、発散源までの距離、フランジの有無、外乱気流を含む設計式を使用します。

外付け式では、送風機の風量が設計値どおりであっても、作業方法が変わって発散源がフードから遠ざかれば制御風速を満たせなくなります。風量不足として報告された案件が、実際には作業位置の変更だった、というケースもあります。排気効果はフードの形式で大きく変わり、囲い式のほうが外付け式より効果が大きいとされています。

10-4 全体換気装置の換気量

全体換気装置については、有機溶剤中毒予防規則第17条に換気量の式が定められています。1時間に消費する有機溶剤等の量W(g)に対し、1分間当たりの換気量Q(m³)は次の値以上とされています。

第一種有機溶剤等:Q = 0.3 × W 第二種有機溶剤等:Q = 0.04 × W 第三種有機溶剤等:Q = 0.01 × W

1時間に500g消費する場合、第一種では150m³/min、第二種では20m³/min、第三種では5m³/minになります。種別によって5倍から30倍の差があるため、使用する溶剤を変更した設備では換気量の再確認が必要です。

10-5 定期自主検査

有機則の対象となる局所排気装置の定期自主検査は、1年以内ごとに1回行うこととされています(同規則第20条)。風量不足が検査で見つかった場合は、本記事の第5章の順序で原因を確認し、記録を残します。

11. 法令・自主検査指針で確認する項目

局所排気装置の定期自主検査指針では、フード、ダクト、ファンなどの検査方法と判定基準が示されています。法令および同指針の側で決まっている項目は次のとおりです。

項目判定基準
制御風速適用される規則の規定値(有機則は囲い式0.4/外付け式側方・下方0.5/上方1.0 m/s)
定期自主検査の周期1年以内ごとに1回
ダクト内静圧設計値と著しい差がないこと
回転方向所定の方向であること
騒音・振動異常な騒音および振動のないこと
ファンの回転数所要の吸気・排気能力を満たす回転数を下回らないこと
制御風速の測定方法囲い式は開口面を一辺0.5m以下の等面積に16以上(著しく小さい場合は2以上)に分割し各部分の中心で測定
軸受温度の測定条件1時間以上運転した後に測定

これらは検査記録として残す項目でもあります。指針では、ベルトのたわみ量および軸受の表面温度についても判定基準が示されていますが、7-1で述べたとおり、同指針の対象設備における基準として扱います。

12. 機種別の取扱説明書で確認する項目

次の項目は、機種・メーカーによって値が変わります。他の設備の数値を流用せず、その送風機の取扱説明書で確認します。以下は昭和電機の遠心式送風機の取扱説明書に示されている例です。

項目同説明書の記載例
軸受温度周囲温度+40℃以下、または約70℃を目安
ベルト張力機体のベルト張力シールに記載のたわみ量と荷重
使用周囲温度・湿度−10〜40℃、湿度90%以下
電圧定格の±5%以内(瞬時は±10%)
電流定格電流以下
吸気温度の仕様区分50℃以下が標準、50〜150℃は耐熱軸受、150〜350℃は空冷、350℃超は水冷
軸受の冷却水0.1〜0.2MPa、5〜10L/min、20℃以下。停止後も10〜15分(高温ガスは30〜60分)継続
点検周期異音・軸受温度・振動・Vベルトは3か月、電流とカップリングブッシュ・防振ゴムは6か月、プーリ・軸封部・パッキンは12か月、絶縁測定は1年
グリース補給周期軸受温度50℃以下で清浄6か月/粉じん3か月/多湿1か月、50〜70℃で3/2/1か月。80℃超は10℃上昇ごとに周期を1.5で割る
インバータ設定上限は銘板周波数以下、下限25〜30Hz、加減速30〜60秒以上、V/fは二乗低減トルク

電動機の許容温度については、絶縁クラスの数値を外被表面温度の上限として直接使用せず、電動機メーカーが示す巻線温度上昇限度、周囲温度、測定方法および表面温度の管理値を確認します。

ボルトの締付トルクも、ねじ径だけでは決まりません。強度区分、材質、潤滑状態および機器メーカーの指定値を確認します。羽根車やケーシングの分解整備では、その機種の指定トルクを使用します。

13. 日常管理と恒久対策

13-1 同じ条件で4項目の推移を残す

試算②のとおり、抵抗の増加は風量には鈍く現れます。1回の測定では判断できないため、風量、圧力、電流、回転数、フィルタ前後差圧を同じ運転条件で記録し、推移として管理します。月1回の記録があれば、清掃や交換の時期を数値で決められます。

フィルタについては、初期差圧と現在の差圧の比を管理値にします。ダクト内のたい積は、点検口からの目視と圧力の推移の両方で確認します。粉体や油分を含む系統では、ダクトの水平部と立ち上がり部の下側にたい積が集中します。

13-2 風量調整はダンパから回転数制御へ

試算③で示したとおり、ダンパによる風量調整は幅が狭く、消費動力も下がりにくい傾向があります。恒久的に風量を下げる必要がある系統では、回転数制御への変更が選択肢になります。

ただし、静圧の一部が系統の高さや機器の固定損失で決まっている系統では、風量を下げても抵抗が2乗で下がらないため、3乗則どおりの削減にはなりません。インバータ化の効果を見積もるときは、系統抵抗曲線が原点を通るかどうかを確認します。回転数の変更そのものについては、7-3のとおりメーカーの承認が前提になります。

13-3 運転条件の変更を記録に残す

風量不足で原因が特定できないケースの多くは、系統側の変更が記録に残っていないことに起因します。フードの形式変更、分岐の追加、フィルタの等級変更、処理温度の変更は、いずれも送風機の運転点を動かします。設備の変更申請にダクト系統の変更を含める運用にしておくと、後からの切り分けが短時間で済みます。

14. まとめ

  • 送風機の風量は、送風機性能曲線と系統抵抗曲線の交点で決まる
  • 現場では、風量、吸込・吐出圧力、電流、回転数を同じ運転状態で測定する
  • 圧力と電流だけで原因を確定せず、送風機形式とメーカーの軸動力曲線を確認する
  • ダンパ開度と風量は比例しない。特に全開に近いダンパをさらに開けても、回復できる風量は小さい
  • 逆回転時の能力低下率は機種によって異なる。電流から推測せず、回転方向を直接確認する
  • 相似条件では、回転数比に対して風量は1乗、圧力は2乗、軸動力は3乗で変化する。ただし、メーカーの許容回転数を超えて増速しない
  • 高温ガスでは体積流量より質量流量が低下する。常温での試運転では密度上昇による過負荷に注意する
  • 有機則の制御風速は、囲い式0.4m/s、外付け式側方・下方0.5m/s、上方1.0m/sである。囲い式と外付け式では測定位置が異なる
  • 外付け式フードの必要排風量は、制御風速とフード開口面積の単純な積では計算できない
  • 法令・自主検査指針で決まっている項目と、機種別の取扱説明書で確認する項目は分けて管理する
  • 日常管理では、同一条件での風量、圧力、電流、回転数、フィルタ差圧の推移を残す

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  • ファン・コンプレッサーの本(入門・機械&保全ブックス) 日本プラントメンテナンス協会。送風機と圧縮機の構造・性能・保全を図解で扱っており、本記事の特性曲線と運転点の理解に使える
  • 送風機ハンドブック 日本産業機械工業会送風機技術者連盟。送風機の形式別特性、試験方法、トラブル対策を網羅した実務書
  • ダクト設計入門 内山武夫。系統抵抗の計算とダクトの設計手順を扱っており、第3章の抵抗曲線の実務的な作り方が確認できる
  • 新 やさしい局排設計教室 沼野雄志。局所排気装置のフード設計と制御風速の考え方を基礎から扱っている。外付け式フードの必要排風量の設計式もこちらで確認できる
  • 一番最初に読む設備保全の本 点検判定値の決め方と記録の運用を扱っており、第11章から第13章の管理方法と合わせて読める

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