新設のタンクや配管を組み上げて、最後に控えているのが耐圧試験と気密試験です。
ところが現場では「タイアツキミツ」とひとつづきで呼ぶことが多く、私も1年目のころは2つで1セットの作業名だと思い込んでいました。実際には目的も、使う流体も、実施する順番も別です。ここを分けて理解できていないと、試験計画のレビューで指摘された意味がまるで掴めません。
もうひとつ、当時わからなかったのが「なぜ水を張るのか?」でした。塔に水を入れて、保持して、抜いて、乾かす。丸一日仕事です。「同じ圧力をかけるならコンプレッサから空気を入れたほうが早いのでは?」と素朴に思っていました。
答えは規格に書いてあります。ただ「規格がそう決めているから」で終わらせると、やむを得ず気体で試験するときに何に気をつければいいのかが判断できません。そこでこの記事では、空気と水が溜め込むエネルギーを実際に計算して比べてみます。
扱う内容は次のとおりです。
- 耐圧試験と気密試験は何が違うのか(目的・流体・順番)
- なぜ規格が水圧を原則としているのかを、エネルギー計算で確かめる
- 実際に起きた死亡事故(窒素で耐圧試験中に閉止板が飛んだ事例)
- 試験圧力は「設計圧力の1.5倍」でいいのか
- 現場で見落としやすい4つのポイント
設計でも保全でも、試験の立会いに出る前に一度通しておくと理解が早いはずです。
まず整理|耐圧試験と気密試験は「目的がまったく違う」
では、この2つは具体的に何が違うのか。見ているものが違う、というのが結論です。順に押さえていきます。
耐圧試験(Pressure Test / Proof Test)=「壊れないか」を見る
耐圧試験は設計圧力より高い圧力をかけて、容器や配管が変形・破壊しないことを確認する試験です。
日本溶接協会(JWES)の解説では、耐圧試験を「設計圧力を超える圧力で行う証明試験(proof test)」と定義しています。つまり、材料・板厚・溶接部の強度がきちんと出ているかを、実物で証明する行為です。
見るポイントは、
- 局部的なふくらみがないか
- 恒久的な伸び(塑性変形)が残っていないか
- 漏れていないか
JIS B 8265でも「耐圧試験圧力において、圧力容器に局部的な膨らみ、伸びなどの異状が生じないとき、これを合格とする」という趣旨で規定されています。
気密試験(Leak Test / Tightness Test)=「漏れないか」を見る
一方、気密試験は設計圧力(常用の圧力)以上の圧力をかけて、漏れがないことを確認する試験です。強度は見ていません。シール性能を見ています。
高圧ガス配管の基準であるKHK S 0801では、気密試験について次のように定めています。
- 原則として空気その他の危険性のない気体で行う
- 試験圧力は常用の圧力以上
- 規定圧力を10分間以上保持した後に漏れを確認する
- 漏れ検査は継手部に発泡剤(石けん水など)を塗布する方法、またはこれと同等以上の検出力のある方法で行う
- 耐圧試験完了の後に行うことを原則とする
出典:高圧ガスの配管に関する基準 耐圧・気密試験(川口液化ケミカル株式会社ブログ/KHK S 0801(2004)より)
なぜ「耐圧 → 気密」の順番なのか
ここ、地味に大事です。
気密試験は気体でやります。気体は後述のとおりエネルギーを溜め込む。 だから、先に水で「壊れないこと」を証明してから、気体を入れるのです。
強度が保証されていない配管にいきなり空気を入れて漏れを探す──これは順番が逆で、非常に危険な行為です。 「気密だから低い圧力だし大丈夫でしょ」と思いがちですが、常用圧力そのものが数MPaという設備はいくらでもあります。
早見表:耐圧試験と気密試験
| 項目 | 耐圧試験 | 気密試験 |
|---|---|---|
| 目的 | 強度の確認(壊れないか) | 漏れの確認(漏れないか) |
| 使う流体 | 原則として水(液体) | 空気・窒素などの気体 |
| 圧力の目安 | 設計圧力の1.25〜1.5倍 | 常用の圧力以上 |
| 保持時間の例 | 5〜20分(KHK S 0801) | 10分以上(KHK S 0801) |
| 合否の見方 | ふくらみ・伸び・漏れがない | 発泡剤で泡が出ない/圧力降下がない |
| 実施順序 | 先 | 後 |
| 危険度 | 相対的に低い | 気体なので配慮が必要 |
なぜ水なのか|蓄積エネルギーを計算して比べる
ここからが本題です。「空気は危ないから」で止めず、どの程度の差があるのかを数字にしてみます。桁が見えると、後半で出てくる規格の条文や事故事例が読みやすくなります。
空気は「バネ」、水は「石」
イメージで言うと、こうです。
- 気体を圧縮する=強力なバネを縮めて押さえ込んでいる状態。手を離した瞬間、バネは一気に伸びる
- 水を加圧する=石をぎゅっと握っている状態。圧力は伝わるが、体積はほとんど変わらない
水の体積弾性率は約2.2 GPa。1.5 MPa加圧しても、体積はわずか0.07%しか縮みません。 だから、配管が破れて圧力が抜けても、水は「膨らんで押し出す」ことができない。 その場でシャッと水が噴き出して、圧力はすぐゼロになります。
一方、空気は圧力が抜けた瞬間に十数倍に膨張します。この膨張がそのまま爆風と破片の推進力になる。
実際に計算してみる:容積1m³・1.5MPaGのケース
数字で確かめましょう。設計圧力1.0 MPaGの容器を、1.5倍の1.5 MPaGで耐圧試験する想定です。
気体(空気)の場合──断熱膨張仕事として計算します。
E = P₁V / (γ−1) × [1 − (P₂/P₁)^((γ−1)/γ)]
P₁=1.6 MPa(abs)、V=1 m³、γ=1.4、P₂=0.101 MPa(abs) を代入すると、
E ≒ 2.18 MJ(218万ジュール)
水の場合──圧縮による弾性エネルギーとして計算します。
E = V·P² / (2K) (K=体積弾性率 2.2 GPa)
E ≒ 511 J(0.511 kJ)
比較すると、こうなります
| 空気 | 水 | |
|---|---|---|
| 蓄積エネルギー | 2.18 MJ | 0.000511 MJ |
| TNT換算 | 約522 g | 約0.12 g |
| 比率 | 約4,270倍 | 1 |
同じ1 m³、同じ1.5 MPaGでも、空気は水の約4,300倍のエネルギーを溜め込んでいます。TNT換算では約520 gと0.12 gの差です。
ここで押さえておきたいのは、倍率そのものより「桁が違う」という事実のほうです。水の511 Jは、1 kgの物体を約50 mの高さまで持ち上げる程度のエネルギーでしかありません。対して空気の2.18 MJは、その4,000倍以上が一瞬で解放されうる状態にあります。
圧力・容積別のTNT換算表
自分が扱っている設備がどのあたりに位置するのか、感覚をつかむために表にしました。 数字は空気を大気圧まで断熱膨張させたときの仕事量をTNT換算(1 kg TNT=4.184 MJ)したものです。
表:気体で加圧したときの蓄積エネルギー(TNT換算・グラム)
| 圧力 \ 容積 | 0.1 m³ | 0.5 m³ | 1 m³ | 5 m³ | 10 m³ |
|---|---|---|---|---|---|
| 0.5 MPaG | 14 g | 72 g | 143 g | 716 g | 1,433 g |
| 1.0 MPaG | 33 g | 163 g | 325 g | 1,626 g | 3,252 g |
| 1.5 MPaG | 52 g | 261 g | 522 g | 2,610 g | 5,220 g |
| 2.0 MPaG | 73 g | 364 g | 728 g | 3,638 g | 7,276 g |
| 3.0 MPaG | 116 g | 578 g | 1,156 g | 5,779 g | 11,559 g |
工場でよく見る**0.7 MPaのエアレシーバータンク(1 m³クラス)**でも、TNT200 g相当。 5 m³のタンクを2 MPaで気体加圧したら、TNT3.6 kg相当です。
工場用力のエアは圧力が低いぶん意識されにくいのですが、容積が効くため、タンクサイズが大きくなると無視できない量になります。
だから「水なら破裂しても飛ばない」
JWESのQ&Aでも、耐圧試験を水圧で行う理由をこう説明しています。
耐圧試験は水圧試験によることとしているが、これは、耐圧試験中に万一破壊が発生すると、同じ圧力でも、気体の場合は水とは比べられないほど大きな被害をもたらすためである。
出典:Q-09-04-09 耐圧試験で気圧試験よりも水圧試験が推奨される理由は。|接合・溶接技術Q&A(一般社団法人 日本溶接協会)
同Q&Aでは実際の破壊事例も紹介されています。
- 1968年:780 MPa級高張力鋼を使った直径16 m の球形タンクが、完成前の水圧試験中に、最高圧力の約90%に達した時点で破壊。破口は約6.7 mに達したが、比較的穏やかな破壊にとどまった
- 1980年:クラッド鋼を用いた水素化脱硫反応器の気圧試験中に破壊。設計圧の約85%(5.4 MPa)で突然破裂し、重さ4.7トンの破片が105 m飛んだ
同じ「破壊」でも、水なら破口が開いて水が出るだけ。気体だと4.7トンの鋼が100 m飛ぶ。 この差が、規格が水圧を原則としている理由そのものです。
実際に起きた事故|窒素で耐圧試験、閉止板が100 m飛んで死亡1名
もう少し身近な規模の事故も見ておきましょう。高圧ガス保安協会(KHK)が公開している事故報告です。
事故の概要
2008年8月、新潟県内の道路拡幅工事に伴う高圧ガス導管(400A × t7.9 mm)の移設工事でのできごとです。
作業ヤードで移設用の導管を組み上げ、窒素ガスで耐圧試験(試験圧力3 MPa)を実施しました。 窒素カードルから調整器を使わずに高圧ホースで直接接続し、閉止弁を徐々に開いて昇圧。
3 MPaに達したところ(自記圧力計の記録は3.3 MPa)で、突然、閉止板が吹き飛びました。
- 閉止板は約100 m飛翔
- 導管(延長約8.6 m、重量約900 kg)は反動で反対側に約10 m移動し、180度反転
- 導管の脇で別作業をしていた作業者1名が脳挫傷で死亡、3名が重軽傷
- 隣接建物の窓ガラス破損、植栽・垣根の損壊、電力線被覆の損傷など第三者被害も発生
出典:高圧ガス事故概要報告 2008-465「耐圧試験中の高圧導管に取り付けた閉止板の破裂により死傷」(高圧ガス保安協会)
何がまずかったのか
報告書を読むと、原因は「仮設だから」という気の緩みに集約されます。
| 項目 | 本来あるべき姿 | 実際 |
|---|---|---|
| 閉止板の板厚 | 計算板厚 約24 mm | 6 mm の一般鉄板 |
| 溶接 | 突合せ溶接または両側すみ肉溶接 | 片側すみ肉溶接 |
| 脚長 | 相応の脚長 | 約2 mm |
| 設計図 | 必要 | なし(溶接士の判断で溶断・溶接) |
| 減圧 | 圧力調整器を設置 | 調整器なしでカードル直結 |
| 試験流体 | 原則水 | 窒素 |
工事担当者が「一般的な6 mmの鉄板」を材料商社から買ってきて溶接士に渡し、溶接士は導管外径より4 mmほど小さく溶断して、脚長2 mmの片側すみ肉溶接で取り付けた──設計計算は誰もしていませんでした。
エネルギーを計算すると、TNT約1.2 kg
この事故の導管の内容積を計算してみます。
- 内径=406.4 − 2×7.9 = 390.6 mm
- 長さ 8.6 m
- 内容積 = π × 0.3906² / 4 × 8.6 ≒ 1.03 m³
3 MPaGの窒素が1.03 m³。先ほどの式に入れると、
蓄積エネルギー ≒ 4.98 MJ = TNT換算 約1,190 g
TNT約1.2 kgが、作業員の数メートル隣にあったことになります。 閉止板(φ402 × t6 mm ≒ 6 kg)が100 m飛ぶには、45度射出・空気抵抗無視でも初速31 m/s(時速113 km)が必要ですが、これはエネルギー全体のわずか**0.06%**に過ぎません。残りは爆風と導管の反動になったわけです。
この事故の教訓(KHK報告書より)
報告書に書かれている教訓が、そのまま新人向けのチェックリストになります。
- 「仮設」こそ本設以上に気配りが必要。試験治具・閉止板・ブラインドは必ず強度計算する
- 末端部にはJIS溶接キャップなど、耐圧性能が保証された部品を使う
- 末端部の溶接は非破壊検査を行う
- 高圧ガスを減圧して使うなら圧力調整器を設置する。ホース・継手・計器も耐圧性能を満たすものを使う
- 試験に従事する者は必要最小限の人数とし、担当者以外は立入禁止措置を取る
- 原則は水圧。やむを得ず気体で行う場合は、非破壊検査など安全確保を徹底する
6番が特に大事です。「圧力をかける区画のそばで、関係ない作業をしていた」──これが死亡につながりました。 耐圧試験中は、ロープを張って人を排除する。当たり前のことですが、工期が押しているとこれが真っ先に省略されます。
配管の溶接部の健全性を確認する非破壊検査については、【壊さずに検査】非破壊検査の概要とその種類について解説! で詳しく解説していますので、あわせてどうぞ。
試験圧力は本当に「設計圧力の1.5倍」でいいのか
現場では「耐圧は1.5倍でしょ」と反射的に答える人が多いのですが、これは規格によって違います。しかも「1.5倍」だけでは足りないケースがあります。
主な規格の試験圧力
| 規格 | 適用 | 液体(水圧) | 気体(気圧) |
|---|---|---|---|
| JIS B 8265(圧力容器の構造-一般事項) | 設計圧力30 MPa未満 | 設計圧力 × 1.5 × σt/σa | 設計圧力 × 1.25 × σt/σa |
| JIS B 8266(圧力容器の構造-特定規格) | 設計圧力100 MPa未満 | 設計圧力 × 1.25 × σt/σa | 設計圧力 × 1.15 × σt/σa |
| KHK S 0801(高圧ガス配管) | 高圧ガス配管 | 常用の圧力 × 1.5以上 | 常用の圧力 × 1.25以上 |
| 圧力容器構造規格(労働安全衛生法) | 第一種圧力容器ほか | 最高使用圧力 × 1.5 | (水に適さない大型容器は気圧試験) |
「JISだけでも1.5倍と1.25倍がある」という点に注意してください。 自分が扱っている機器がどの規格で設計されたものなのか、必ず設計図書・強度計算書で確認するのが先です。
なお、圧力容器の設計圧力そのものの考え方については、【プラント設計の基礎】圧力容器の設計圧力の考え方【設計圧力、許容圧力、常用圧力】 で整理しています。
σt/σa(許容応力比)はなぜ付いているのか
JIS B 8265の式に出てくる σt/σa が、新人さんを混乱させる項です。
- σa:設計温度における材料の許容応力
- σt:試験温度(=だいたい常温)における材料の許容応力
金属は温度が上がると許容応力が下がります。 本来なら設計温度の状態で耐圧試験をするのが理想ですが、300℃の容器に300℃の水を張るなんて現実的ではありません。
そこで、常温で試験する分だけ試験圧力を割り増しして、設計温度での厳しさを再現する。これがσt/σaの正体です。
具体例で見てみる
炭素鋼配管(ASME B31.3系、試験温度38℃)の例で計算してみます。設計圧力は3.5 MPaGとします。
| 設計温度 | 許容応力 S | St/S | 試験圧力 Pt = 1.5 × 3.5 × (St/S) |
|---|---|---|---|
| 38℃ | 138.1 MPa | 1.000 | 5.25 MPaG |
| 200℃ | 133.6 MPa | 1.034 | 5.43 MPaG |
| 260℃ | 131.2 MPa | 1.053 | 5.53 MPaG |
| 300℃ | 127.0 MPa | 1.087 | 5.71 MPaG |
| 350℃ | 111.0 MPa | 1.244 | 6.53 MPaG |
炭素鋼は200℃くらいまでは許容応力がほとんど変わりません。だから低温設計の設備なら「単純に1.5倍」でも実害は出ません。
しかし300℃を超えると許容応力が下がり始めます。350℃設計なら、試験圧力は単純1.5倍の5.25 MPaGではなく6.53 MPaGが必要で、差は約24%になります。
「1.5倍」とだけ覚えていると、高温設計の設備で試験圧力が不足したまま合格判定を出しかねない、ということです。
新人がハマる4つの落とし穴
ここからは、机上ではなく現場でやらかしがちなポイントです。
落とし穴①|水頭圧を忘れて、上限を超える
水圧試験では、水そのものの重さで圧力が上乗せされます。
| 液面からの高さ | 水頭圧 |
|---|---|
| 5 m | 0.049 MPa |
| 10 m | 0.098 MPa |
| 20 m | 0.196 MPa |
| 30 m | 0.294 MPa |
高さ20 mの塔で、設計圧力1.0 MPaG・試験圧力1.5 MPaGの場合を考えます。
頂部で1.5 MPaGを指していても、底部の実圧力は 1.5 + 0.196 = 1.696 MPaG。 これは試験圧力の**113%**にあたります。
JIS B 8265・B 8266では、任意の点における水圧試験時の圧力(水頭圧を含む)が耐圧試験圧力の106%を超える場合には、一次一般膜応力が試験温度での降伏点(または0.2%耐力)の90%を超えないことなどを確認しなければならない、と規定しています。
逆算すると、試験圧力1.5 MPaGなら水頭高さ9.2 mが106%の境界です。 つまり、10 mを超える立形容器・塔槽は、水頭圧の検討が実質必須ということになります。
「圧力計は頂部に付いているから安心」ではありません。一番厳しいのは底部です。
落とし穴②|満水にしたら基礎とサポートが持たない
これは意外な盲点です。
内径2.0 m × 胴高さ5.0 mの立形容器を考えます。
- 円筒部の容積 = π × 2.0² / 4 × 5.0 = 15.7 m³
- 満水時の水の重量 = 約15.7トン
- 本体自重(t=12 mm、表面積約37.7 m²)≒ 3.6トン
運転時(気体が入っている)は3.6トンなのに、満水時は19.3トン。約5.4倍です。
これが問題になるのは、
- 架構上の容器:架構(構造物)が満水荷重を見込んで設計されていないと、たわみ・座屈が起きる
- 配管:配管も水を張れば重くなる。特に大口径のガス配管は、運転時ほぼ空なのでサポートが満水を想定していないことがある
- 基礎:既設更新のときに基礎の耐荷重が足りない
だからこそ、JIS B 8265・B 8266では、気圧試験を認める条件のひとつとして「構造物、その支持構造などに不当な荷重、変形又は応力を発生させるおそれがあるもので、その対策が実用的でないとき」を挙げています。「水が張れないなら気体でよい」ではなく、**「水を張ると壊れるから、やむを得ず気体」**という順番です。
配管の重量と熱の影響については、【プラント配管設計】知らないと壊れる!?配管設計における重量と熱変化対策の徹底解説 も参考になります。
落とし穴③|試験温度が低すぎると、脆性破壊する
冬場の屋外での耐圧試験、これが地味に危険です。
JIS B 8265・B 8266では、オーステナイト系ステンレス鋼以外の鉄鋼材料による圧力容器の耐圧試験は、最低設計金属温度(MDMT)に17℃を加えた温度以上の金属温度で実施することと規定されています。
なぜか。鋼材には延性-脆性遷移温度があり、これを下回ると、粘り強さを失ってガラスのように割れるからです。
先ほどのJWESのQ&Aでも、耐圧試験の破壊を防ぐには「靱性の確保と欠陥の排除が重要」で、簡単な方法として「破面遷移温度(vTrs)を耐圧試験温度より低くする」ことが挙げられています。
現場的な対処は単純です。
- 冬季は井水・工水をそのまま使わない(5℃を切ることがある)
- 必要なら温水を混ぜて水温を上げる
- 金属温度を測る(水温ではなく、容器の板が何℃か)
「早く終わらせたいから」と朝イチの冷え切った状態で加圧を始めるのは、リスクを取っているという自覚を持ってください。
落とし穴④|気密試験の「圧力降下」は温度でごまかされる
気密試験を圧力降下法(一定時間保持して圧力計の指示を見る)で行うときに、判定を誤りやすいポイントです。
容積1 m³、1.0 MPaGの系で、10分間に0.01 MPa下がったとします。
これを大気圧換算の漏れ量に直すと、
漏れ量 = 0.01 MPa × 1 m³ ÷ 0.101 MPa ≒ 99 L / 10分 = 約590 L/h
決して小さくない漏れです。ところが、この0.01 MPaという変化量は、温度変化だけでも簡単に発生します。
気体の温度が1℃変わると、圧力は約0.0038 MPa変化します。(1.1 MPa(abs) ÷ 293 K)
判定基準の0.01 MPaに対して、1℃の温度変化で38%相当のズレが出る計算です。 朝から昼にかけて配管が日射で5℃暖まれば0.019 MPaの上昇要因となり、実際には漏れていても、圧力計の指示だけを見れば「下がっていない=合格」と読めてしまいます。
だから、
- 温度を必ず記録し、補正する(P₁/T₁ = P₂/T₂ で換算)
- できるだけ日射のない時間帯・条件で行う
- 温度が安定するまで十分な均圧・なじみ時間を取る(加圧直後は断熱圧縮で温度が上がっている)
- 迷ったら発泡剤(石けん水)で継手を一つずつ見るのが確実
KHK S 0801が「継手部に発泡剤を塗布する方法、またはこれと同等以上の検出力のある方法」と書いているのは、こういう背景があるからです。
フランジからの漏れは、そもそもガスケットの選定・締付けで決まります。詳しくは【プラント設計の基礎】フランジを使用する際には必須のガスケットについて解説! をご覧ください。
現場の実務|耐圧試験の段取りチェックリスト
最後に、実際に立会いに出る前のチェックリストをまとめます。印刷してヘルメットのバイザーに挟んでおくくらいの気持ちで。
事前準備(前日までに)
- 適用規格の確認:JIS B 8265か、B 8266か、高圧ガス保安法か、労安法か。試験圧力の根拠を書類で押さえる
- 試験圧力の計算:σt/σa を考慮したか。水頭圧を加味したか
- 圧力計の選定:目盛の最大値が試験圧力の1.5〜4倍程度のものを選ぶ(振り切れも、針が動かないのもNG)。校正証明書の有効期限を確認
- 圧力計は2個以上:1個は加圧側、1個は目視しやすい位置に。1個だと故障に気づけない
- 仮設閉止板・ブラインドの強度計算:これを飛ばすと2008年の事故と同じ道をたどります
- 安全弁・逃し弁の取扱い:試験圧力より低い設定なら、取り外すか盲板で隔離する。開放したまま加圧しない
- 試験範囲の隔離:どのバルブを閉め、どこに盲板を入れるか。P&IDに色を塗って全員で共有
- 計器・レベル計・可とう管の隔離:試験圧力に耐えない計装品を潰さない
- 満水重量の確認:架構・サポート・基礎が持つか
- 水温・気温の確認:MDMT + 17℃以上を確保できるか
- 水質の確認:オーステナイト系ステンレスは塩化物イオン濃度に注意(応力腐食割れ対策)
- 立入禁止区画とバリケードの計画:誰がどこに立つか、避難経路はどこか
昇圧の手順
KHK S 0801では、気体で耐圧試験を行う場合の昇圧手順が明記されています。これは水圧試験でもそのまま応用できる、優れた考え方です。
- まず常用の圧力、または耐圧試験圧力の1/2まで昇圧する
- その後、常用の圧力または耐圧試験圧力の1/10ずつ段階的に昇圧する
- 各段階で異常がないことを確認してから次へ
- 耐圧試験圧力に達したとき、漏えいなどの異常がないことを確認
- その後圧力を下げて常用の圧力にしたとき、ふくらみ・伸び・漏れがないことを確認して合格
要するに、一気に上げない。段階ごとに立ち止まって見るということです。 保持時間は5〜20分(危険物政令の完成検査前検査で水圧検査が必要な設備は10〜20分)が標準とされています。
そして重要なのが、「漏れを見に近づくのは、圧力を下げてから」。 加圧中に漏れ箇所を手で触って探すのは絶対にやめてください。ピンホールから噴き出す高圧の水は、皮膚を貫通します。
やむを得ず気体で行うときの追加対策
JIS B 8265・B 8266では、気圧試験を適用してよい場合として次の5つを挙げています。
- 水の残存が当該圧力容器の使用上許されない場合
- 水圧試験後の水の排出が完全にできない場合
- 水を満たした当該圧力容器、その支持構造などに不当な荷重・変形・応力を生じさせるおそれがあるもので、その対策が実用的でないとき
- 水の入手が量的に著しく困難なとき
- 適切な水質の水が入手困難なとき(オーステナイト系ステンレス鋼の場合は塩素、イオン濃度など)
出典:Q-09-04-09 耐圧試験で気圧試験よりも水圧試験が推奨される理由は。|接合・溶接技術Q&A(一般社団法人 日本溶接協会)
「面倒だから」は、この5つのどこにも入っていません。
やむを得ず気体で行う場合は、
- 溶接部の非破壊検査を実施してから加圧する(欠陥がないことを先に保証する)
- 立入禁止範囲を広く取る。人は最小限、遠隔から監視
- 圧力調整器を必ず設置する。ボンベ・カードル直結は厳禁
- 段階昇圧を厳守し、各段階で必ず一時停止する
- 破片の飛翔方向を想定し、防護壁・土のうなどを配置する
試験後の後始末(忘れられがち)
- 完全に水を抜く:ドレン抜きの取り忘れは、冬季の凍結破損や腐食の原因になります
- 乾燥させる:特にステンレスは、水滴が残ったまま放置すると塩化物が濃縮して孔食・応力腐食割れを起こします
- 隔離した計器・安全弁を元に戻す:これを忘れると、運転開始後に過圧保護がないという最悪の状態になります。復旧チェックリストで二重確認を
- 記録を残す:圧力・温度・保持時間・立会者。後の定期検査で必ず参照します
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まとめ
要点を整理します。
- 耐圧試験=壊れないか(強度)、気密試験=漏れないか(シール)。目的が違い、順番は「耐圧 → 気密」
- 同じ容積・同じ圧力で、空気は水の約4,300倍のエネルギーを溜め込む。1 m³・1.5 MPaGでTNT約520 g相当
- 規格は水圧を原則とし、気圧試験は5つの限定条件下でのみ認めている。「面倒だから」はその条件に含まれない
- 2008年には、窒素での耐圧試験中に仮設閉止板が約100 m飛び、死亡1名・重軽傷3名の事故が起きている。仮設部品ほど強度計算が要る
- 試験圧力は一律1.5倍ではない。規格ごとに係数が違い、高温設計では許容応力比 σt/σa が効く(350℃設計で約24%増)
- 見落としやすいのは、水頭圧・満水重量・低温脆性・温度による見かけの圧力変化の4点
水を張って、保持して、抜いて、乾かす。手間はかかりますが、その手順の一つひとつには根拠があります。「規格にそう書いてあるから」で止まらず、条文の背景まで一度たどっておくと、やむを得ず気体で試験する場面や、規格に書かれていない仮設部品を扱う場面で判断を誤りにくくなります。
試験計画をレビューするときは、まず「適用規格は何か」「試験圧力の根拠はどの式か」の2点から確認してみてください。
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参考書籍
耐圧試験や圧力容器をもっと深く学びたい方へ、実務で使える書籍を紹介します。
- 今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい圧力容器の本(大原良友/日刊工業新聞社) 圧力容器とは何か、どんな種類があり、どう設計・製作され、どう安全に運転するのかを図解でまとめた入門書。新人さんが最初の1冊に選ぶならこれです。
- 新版 圧力容器の構造と設計―JIS B 8265及びJIS B 8267(JIS使い方シリーズ)(小林英男/日本規格協会) この記事で何度も出てきたJIS B 8265を、規格の意図から解説してくれる一冊。耐圧試験の条文の背景を理解したい人向けです。
- 図解入門 現場で役立つ溶接の知識と技術(秀和システム) 耐圧試験で漏れるかどうかは、結局は溶接品質で決まります。溶接部の欠陥がどう生じるかを知っておくと、試験の前段階で不具合を潰せます。
- 配管の本(入門・機械&保全ブックス)(日本プラントメンテナンス協会) 配管の要素・構造から保全上の問題点、応力解析や溶接まで、保全担当者向けにコンパクトにまとまっています。
- わかる! 使える! 配管設計入門(西野悠司/日刊工業新聞社) 配管設計の基礎知識から段取りまで。試験計画を立てる立場になったときに、全体像を把握するのに役立ちます。


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