【プラント設計の基礎】高圧ガスプラントには必須の圧力容器について【設計・計算・勉強】

みなさんこんにちは、プラントエンジニアのヤンです。

現役プラントエンジニアが教えるプラント設計の基礎知識。

学校では教えてくれないことを中心に、実務に直結する内容を書いていきます。今回は「圧力容器」について語ります。

圧力容器は自宅にあるスプレー缶から超低温の液か窒素などを保存するタンクまで数多く存在します。

しかし、気体は圧縮すればエネルギーがたまりますので非常に危険です。

そんな危険なものを圧縮して保管する圧力容器とはどんなものなのでしょう?

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目次

身の回りにありふれる圧力容器

それ程気づいていないかもしれませんが圧力容器は私たちの生活の中に溶け込んでいます。

スプレーなどのエアゾール管

  • 車のタイヤ(容器といわれると?ですが)
  • 給湯器(ボイラー)
  • 液化ガスタンク
  • 定置式超低温貯槽(コールドエバポレータ)

など身近なところに多く使われているのが圧力容器となります。

製油所、発電所、工場などの工業施設でさらに顕著に使われています。

圧力容器とは?

圧力容器とは?

その名前が示すように、圧力容器は加圧されているので(ここでのポイントは加圧容器は必ずしも内部からの圧力「内圧」だけでなく、時には外からの圧力「外圧」も受けている点です)その圧力に「耐える」必要があります。

その為に圧力容器を組み立てる際には、溶接継手が使用されています。

圧力容器を組み立てる際に何らかの不具合があると、圧力容器の内容物や使用場所(例えば病院の人工空気製造装置等)によっては、致命的な結果となる可能性があります。

また、圧力容器が正確に組み立てられていても、内圧が上がりすぎれば爆発(正確には爆発ではないのですが)する可能性があります。

その原因は何でしょうか?もちろん「安全弁」を取り付けていてもその役割を果たさない時があります。そうなった場合にいったい何が起こるのでしょうか?

基本的に物質は熱くなるとその分子が振動し、その原子が互いに距離をあけようとします。その振動が密閉された圧力容器内で起こっていると、加熱された原子が互いに距離を開けようとしても、密閉されているので距離を開けることができません。

その結果、圧力が上昇しそれに伴い最も弱い点、つまり溶接した個所や強度的に最も低い部分から破壊します。この現象がゆっくり進もうが、早く進もうが、結果としては圧力容器に大きな損害をもたらします。

圧力容器を設計する上で重要なボイル・シャルルの法則

圧力容器を設計する上で重要なボイル・シャルルの法則

加圧容器内の気体の挙動はボイルとシャルルという二人にちなんで命名された「ボイル-シャルルの法則」によって説明することができます。

  • P1×V1÷T1 = P2×V2÷T2

Pは絶対圧、Vは体積、Tは絶対温度です。

絶対圧とは何でしょうか?まず普通の圧力計は大気圧状態が「0」となるように目盛りが刻印されています。これをゲージ圧と呼びますが、実際にはゲージ圧が「0」でも大気は存在しています。

そこで完全な真空を「0」とする圧力を絶対圧と呼びます。絶対圧に0.1013MPaGを加えるとゲージ圧となります。

また、絶対温度も重要な概念となります。基本的にセルシウス度で0℃というのは水が氷る温度です。

しかし、絶対温度では分子の運動が完全に停止した状態を0Kとします。絶対温度に273.15を加えるとセルシウス℃となります。

ではなぜこのような補正係数が必要なのでしょうか?上記の方程式を見てもらえばわかりますが、温度が0℃の場合ゼロで除算します。数学で0で除算する事は定義する事が出来ません。

実際に温度が変化すると圧力はどうなるのか?

実際に温度が変化すると圧力はどうなるのか?

ボイル・シャルルの法則を理解する一番わかりやすい方法は、密閉容器に加圧ガスが充填されている状態と仮定した時です。

ガスの温度は40℃で、容器の圧力ゲージは2MPaGです(高圧ガスじゃん!というのは無視してください)。したがって、圧力と温度の状態は、絶対圧力と絶対温度に換算すると

  • P1 =2MPaG+0.1013=2.1013MPaA
  • T1 =40℃+273.15= 313.15K

になります。

そしてここからは現実的に起こりうる状況を考えてみましょう。

暑い日に密閉容器を車に残したとします。容器内のガスは、温度が100℃に上昇します。この時の絶対温度は

  • 100+273.15=373.15K

です。

さて、密閉容器内の圧力はどうなるでしょうか?ボイル・シャルルの式から計算してみましょう。

  • P1×V1÷T1 = P2×V2÷T2

ここでV1とV2は変わりません。なぜなら同じ圧力容器内なので体積は変化仕様がありません。よって

  • P1÷T1=P2÷T2

式を整理すると

  • P2=P1×T2÷T1

となります。実際に値を代入してみましょう。

  • P2=2.1013MPaA×373.15K÷313.15K
  • P2=2.504MPaA

これは一般的な高圧ガスの容器であれば問題ないかもしれません。しかし、例えば100円ライターなどの場合は爆発などの恐れがあり大変危険です。

このように圧力容器の内部圧力は温度に大きく左右されます。その為、空気を液化して分離する装置(深冷分離装置)では各メーカーが少しでも断熱性能を上げようと、研究を重ねています。

圧力容器を勉強するために

圧力容器を勉強するために

圧力容器のことを勉強するには

  • 実際の設計にかかわること
  • 第1もしくは2種圧力容器の設計に関わること。特にボイラー協会への強度計算書などの書類を自分で作ること。
  • 実際に製作しているところ(溶接の状況など)を自分の目で見る事

この3点が非常に重要になります。

また、机に置いておきたい本としては

の2冊がお勧めです。

トコトンやさしい圧力容器の本 (今日からモノ知りシリーズ)

新版 圧力容器の構造と設計―JIS B 8265及びJIS B 8267 (JIS使い方シリーズ)

圧力容器について:まとめ

気体は温度によって圧力が大きく変化します。その為、圧力容器を設計する際にはその温度変化や、使用条件などをよく考慮することが必要です。

圧力容器自体は身の回りにも多く使われていますが、その設計は数多くの点を考慮して事故が起きないように作られています。

圧力容器を設計する際は温度や使用圧力、材料に注意をして設計していきましょう。

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