【プラント設計の基礎】容積式ポンプの基礎!基本知識から選定について!

現役プラントエンジニアが教えるプラント設計の基礎知識。

学校では教えてくれないことを中心に、実務に直結する内容を書いていきます。今回は「ポンプの超基礎」について語ります。

ポンプは単に冷却水などの水の輸送から、時には薬品、時には食品など多種多様な流体を輸送します。

そんなポンプには大きく分けると遠心式と容積式に分けることができますが、今回は容積式に焦点を当てていきます。

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目次

ポンプは生活の中にあふれています。

ポンプは機械工学の基礎となる要素技術の一つであり、日常生活から産業の各シーンに至るまでその重要性は計り知れません。水道水の供給から自動車の冷却システム、さらには人体の循環器系に至るまでポンプは私たちの身の回りに常に存在しています。

このように多岐にわたる用途を持つポンプですが、その仕組みや種類、適用される原理について詳しく知る機会は意外と少ないかもしれません。そこで、今回は容積式ポンプにスポットを当てて、その原理と応用を専門的視点から解説します。

容積式ポンプとは?

容積式ポンプはポンプ内の一定の体積(容積)の流体を捕捉し、それを系統内で移動させる装置です。ポンプのサイクルごとに一定量の流体が吸引され、押出されるメカニズムを持っています。

このポンプの特徴は、流体を定量的に輸送できる点にあります。これは、精密な流量制御が要求される化学反応や処理プロセスにおいて不可欠な特性となります。

可動部が流体を吸引し、それをポンプの出口側へと移動させる運動を行います。この運動は一般的にはピストンやダイヤフラムなどによって行われ、ポンプ内の圧力変化によって流体が移動することになります。

容積式ポンプにはさまざまな種類が存在しますが、特に親しみやすいのは過去に井戸で利用された手動のピストンポンプです。このタイプのポンプは往復容積式ポンプの一例で、ピストンが直線的な往復運動を行うことによって流体を吸い上げ、押し出します。

容積式ポンプのよく知られた例は、昔の井戸などで使用した手押しポンプです

Wikipediaより引用

プラント設計や運用において容積式ポンプの選定を行う際は、ポンプの性能曲線、流体の粘度や化学的特性、さらにはシステム内での動作条件などを考慮する必要があります。例えば、高粘度の流体を扱う場合や高圧力が必要な場合には、特定の設計の容積式ポンプが選ばれることがあります。

プロのエンジニアとして、ポンプの効率、メンテナンスの容易さ、耐久性、さらには運用コストといった要素も検討に入れる必要があります。また、流体の性質によっては、腐食や摩耗への対策が必要になることもあります。

容積式ポンプは精密な流量制御が要求される繊細な産業プロセスから、日常的な水供給システムまで、幅広いアプリケーションにおいて中心的な役割を果たしています。エンジニアとしてこれらのポンプに関わる際には、ポンプの動作原理とそれがシステムに与える影響を深く理解しておくことが重要です。

容積式ポンプの基本的な動作

容積式ポンプは様々な産業で流体を正確に移送するために使用される重要な機械の一つです。基本的な動作原理は、ポンプ内の一定の容積の空間を作り出すことによって流体を吸い込み、それを排出することです。

ポンプの断面図を見るとピストンや内部のチェックバルブ、そしてポンプハウジングの下部にあるもう一つのチェックバルブが観察できます。ピストンはシリンダー内を往復運動することで流体を移動させる要素です。

操作者がハンドルを引き上げると、ピストンはポンプハウジング内を下向きに動きます。ピストンの下降運動によって生じる負圧が下部のチェックバルブを閉じさせます。その結果、流体はピストン側のチェックバルブを通過し、シリンダー内に流入しこの空間が流体で満たされるのです。ハンドルを押し下げる際には、対照的な現象が発生します。

ピストンが上向きに動き始めると、ピストン上部の流体は加速され、ピストン側のチェックバルブが閉じ、流体が上部のスペースに閉じ込められます。同時に、ピストンのさらなる上昇によってシリンダー内で負圧が生じ、下部のチェックバルブが開いて新たな流体が下部の空間に吸引されます。

この運動サイクルが継続することで、ピストンの上部に閉じ込められた流体は十分な圧力がかかると最終的に出口から排出されます。この連続的なピストンの往復運動により一定の流量が維持され、流体の連続的な移送が可能になります。

ポンプの性能を最適化するためにはピストンとチェックバルブの素材選定、耐久性、および総合的なポンプ設計に特に注意を払う必要があります。また、流体の種類や特性(粘性、腐食性、温度など)によってポンプの材質や設計を適応させることが、効率的かつ長期的な運用を実現するために不可欠です。

容積式ポンプの特徴

容積式ポンプは高粘度流体を扱う場合や一定の吐出圧を必要とする応用に適しています。その動作原理は、ポンプ内部の定義された容積が周期的に増減することで流体を移動させることにあります。この特性により、容積式ポンプは流体の粘性に依存せずに一定の流量を保持する能力を持っており、精密な流量制御が求められる場面での利用に適しています。

遠心式ポンプと比較した場合、容積式ポンプは出口側のバルブによる圧力調整や流量調整に難があります。遠心式ポンプでは出口側のバルブの開閉によって、簡単にこれらの調整を行うことが可能ですが、容積式ポンプではこの手法が使用できません。

流量調整や圧力調整が必要な場合、容積式ポンプのシステムにはバイパス弁の組み込みが要求されることがあります。バイパス弁を通じて吐出された流体の一部を吸入側に戻すことにより、システム内の圧力を管理しポンプにかかる負荷を適切に調整することができます。

さらにポンプシステムの安全性を高めるため、出口側には安全弁を設けることが重要です。これは、不測の事態で圧力が急上昇した場合に備え、システムに損傷を与える前に過剰な圧力を安全に逃がすためのものです。これにより、機器や操作者の安全を保ちながら、ポンプの持続的な運用が可能となります。

プラント設計においてはこれらの特性を理解し、適用するプロセスに応じて容積式ポンプと遠心式ポンプの選択を行う必要があります。粘度が高い流体の移動、精密な流量制御、安定した圧力維持が要求される場合には容積式ポンプが、流体の性質や処理条件が変動する場合や大量の流体を移動させる必要がある場合には遠心式ポンプが適しているとされています。

他の容積式ポンプ

容積式ポンプは内部の動作部品(ピストン、ダイアフラム、ギアなど)によって容積が変化し、流体を特定の方向に移動させることができます。

ピストンポンプ

  • 内部のピストンの往復運動により、流体を吸い込み、圧力をかけて排出します。
  • 精密な流量制御が可能で、高圧力での使用に適しています。

ダイアフラムポンプ

  • フレキシブルなダイアフラムを動かすことで流体を移動させます。
  • 漏れが少なく、腐食性または粒子を含む流体の輸送に適しています。

ギアポンプ

  • 2つのギアが互いに噛み合うことで、流体をギア間の空間に捕らえ、移動させます。
  • 連続的な流れや粘度が高い流体の輸送に有利です。

遠心式ポンプとの使い分けは?

遠心式ポンプは、回転するインペラーを利用して流体に運動エネルギーを伝達し、このエネルギーを流体の圧力エネルギーに変換します。インペラーの高速回転により、流体はポンプの中心から外側に向かって放出されることによって、吸入口から流体が吸い込まれます。このタイプのポンプは高い流量を必要とするアプリケーションに適しており、水処理施設や火力発電所、冷却システムなどに一般的に見られます。

一方、容積式ポンプは回転または往復する要素によって流体を囲む容積を変化させることにより流体を移動させます。このポンプは流体を一定の速度で移動させ、圧力変動が少ないため、粘度が高い液体や高い揚程が必要なアプリケーション、精密な流量制御を必要とする場面に最適です。化学工業や食品加工、医薬品製造といった分野でよく利用されます。

遠心式ポンプと容積式ポンプの使い分けは以下のように使い分けます

容積式ポンプと遠心式ポンプの使い分け
  • 流量と揚程:遠心式ポンプは大流量と低~中揚程に、容積式ポンプは小~中流量と高揚程に適しています。
  • 粘度:流体の粘度が高い場合、容積式ポンプが効率的です。
  • 效率:遠心式ポンプは低粘度の流体において効率が良く、容積式ポンプは流体の粘度に影響されにくい効率を持ちます。
  • コストとメンテナンス:遠心式ポンプは構造が単純でメンテナンスコストが低く抑えられますが、容積式ポンプは複雑な構造をしており、メンテナンスが大変です。


最適なポンプ選択は、流体の特性、必要な性能、コスト、メンテナンス要件を総合的に評価し、アプリケーションの特定の要求を満たすことができるものでなければなりません。そのため、これらのポンプの運動学、熱力学、材料科学に関する深い知識を持つことが求められます。

まとめ

ポンプは私たちの生活と産業において不可欠な機器であり、特に容積式ポンプはその精密な流量制御能力により、多岐にわたる用途で中心的な役割を果たしています。容積式ポンプは、定義された容積を利用して流体を一定量ずつ移送することができ、高粘度の流体や精密な流量制御が必要な状況に適しています。

プラント設計においては、流体の特性やシステムの要求に応じて、適切なポンプの選定が重要です。遠心式ポンプと容積式ポンプはそれぞれ異なる特性を持ち、流量、揚程、粘度、効率、コスト、メンテナンスの観点から適切な選択が求められます。

これらのポンプの原理と特性を深く理解し、最適なポンプ選択を行うことが、効率的かつ経済的なプラント運用には不可欠です。

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